連載「日本をリハビリテーションする」第1回:鶴巻温泉病院院長・鈴木龍太

脳卒中は早く「リハビリテーション」を開始することが回復の早道!

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回復期リハビリテーションとは?

 脳卒中になった患者さんは、救急病院や神経内科、脳神経外科のある病院で治療を受けます。引き続き手足の麻痺や、言葉の障害、呑み込みの障害などの脳障害に関して、リハビリテーションを受けます。

 しかし、冒頭でお話したように、日本では「脳卒中は動かしてはいけない」という常識があったので、体が固まって動けなくなった、寝たきりの患者さんが大勢発生しています。しかも、そのような患者さんは、家では世話ができないので、病院、特に昔でいう老人病院に大勢入院していた時期がありました。

 欧米では寝たきりの患者さんは少なく、その理由を探ると「リハビリテーションを早期から行っていること」が分かりました。

 そこで2000年に、回復期リハビリテーションという制度が新設されました。脳卒中発症から2カ月以内であれば、回復期リハビリテーション病院(同じ病院の中にあれば病棟)に移り、集中したリハビリテーションを受けることができます。リハビリテーションは1単位20分として、回復期リハビリテーションでは最大9単位(3時間)、土日休みなく実施することが推奨されています。

 ただし、入院期間が最大6カ月と決まっており、さらに、70%以上(基準の高い病院)の患者さんが自宅等に退院することが義務付けられています。

 自宅等に退院することを「在宅復帰」と言いますが、自宅、家族の家以外に、サービス付高齢者住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム等が自宅等に分類されます。一方、病院、老人保健施設(老健)など医者が在籍する施設は、自宅等とは言いません。

回復期リハビリテーション病棟はさらに増加する

 回復期リハビリテーション病棟は、2016年末で79000床登録されていますが(中医協-3 29.10.25 個別事項リハビリテーション)、これからの超高齢社会で、さらに脳卒中患者が増加すると推定されているので、さらに増加していくものと考えられています。

 「脳卒中の発症から2カ月以内」という決まりがありますが、2カ月急性期の病院で待っていてはいけません。鶴巻温泉病院回復期リハビリ病棟を2017年に退院された脳梗塞の患者さん135人を発症から何日目に急性期病院から転院してきたかで分類してみました。「発症9日目まで」「10〜29日」「30日以上」の3群に分けて、入院の時の歩行、食事、着替え、トイレ移動などの日常生活動作(ADL FIMで点数化)を退院時に入院時よりどのくらい良くなるかをFIMという点数で比較したものが、図1のグラフです。

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図1

 このグラフを見てお分かりのように、回復期リハビリテーションに早く転院して、早く集中的なリハビリテーションを実施したほうが確実によくなります。

 皆さんは今は考えられないかもしれませんが、発症9日以内に転院するのが一番良いことがわかります。しかし、発症9日以内に回復期リハ病院へ転院することは、今の日本でも一般的ではありません。急性期の先生が回復期へは2週間過ぎたころに申し込もうと思っていたり、患者・家族が転院を断ったり、受け入れる回復期リハ病院のほうが、病状が落ち着くまで受け入れの準備ができていないことも現状です。

 それ以外にも重症で意識障害が合ったり、合併症が治療できていなかったり、いろいろな理由で、こんなに早く転院することが難しい場合もあります。

 回復期リハビリテーション病棟協会の調査でも、14日以内に回復期リハ病院(病棟)へ入院したのは全体の24.7%しかありません(「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」平成30年2月 一般社団法人・回復期リハビリテーション病棟協会)。

 でも、ともかく早く転院できるようにしてもらいましょう。急性期の治療が終わった頃に、皆さんから「早く回復期リハへ転院させてください」と申し出て進めてもらうのが、懸命だと思います。

 回復期リハビリテーション病院に早く移ったほうが良いという結果は、急性期の病院でも十分なリハビリテーションが実施できていない可能性があります。

 また栄養の問題もあるかもしれません。急性期では食事を食べないで、暫く点滴で管理することが多く、知らないうちに栄養不足になっていることも考えられます。

 発症9日目に転院した患者さんは急性期と合わせた入院期間が短くなります。1〜2カ月早く自宅へ退院できます。早くリハビリを開始すれば早く変えれるということを是非覚えておいてください。

 この連載では脳卒中やその治療、リハビリテーションについて知っておいていただきたいことを、分かりやすく説明していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
(文=鈴木龍太:鶴巻温泉病院理事長)

鈴木龍太(すずき・りゅうた)

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長
「変化を進化に、進化を笑顔に」をモットーに日々の診療やリハビリテーションに注力し、高齢者医療や緩和ケアなど地域の幅広いニーズに応える病院経営に取り組む。
1977年、東京医科歯科大学医学部卒。医学博士。米国NIH留学、昭和大学藤が丘病院脳神経外科准教授、安全管理室 室長を経て、2015年より現職。
日本リハビリテーション医学会専門医・指導医、日本慢性期医療協会常任理事、日本リハビリテーション病院・施設協会理事。

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