顕微鏡を使った「虫歯の治療」
次は虫歯の治療について見てみましょう。
まず虫歯の治療で痛みが出る原因を考えてみましょう。治療後に痛みが出た歯の再治療をすると、虫歯が残っていることがよくあります。高い確率で虫歯が残っている場所は、肉眼治療では見えにくい場所です。暗い場所で小さな虫歯を見逃していることは、痛みや違和感の原因になってしまいます。
また、樹脂を使った治療の場合、接着が上手くできていないことが痛みの原因になります。接着が上手くできない原因は、接着される歯の表面に虫歯や汚染物質が残っていたり、唾液が付いてきちんと接着していないことが大きな要因です。
唾液が治療している歯に触れないようにするためには、ラバーダム防湿を行います。ラバーダム防湿法とは、ゴム製の薄いシートに小さな丸い穴を開けて、治療する歯をその穴から出します。この方法を使えば、治療中、削りかすや水が口の中に溜まったり飲み込んだりすることもなくなります。さらに、治療する歯が唾液に汚染されることもなくなります。
ただし、歯とラバーの間に小さな隙間があれば、唾液は簡単に入り込んできます。ここでも顕微鏡を使い、最大倍率23倍に拡大し、明るく光を当てることで、隙間がない、唾液の侵入のない、確実な接着治療をすることが可能になります。
さらに、根の治療や抜歯などの外科治療も、顕微鏡を使った治療をすることで痛みが軽減される可能性があります。
このように、一つ一つの処置を確認し、確実な処置ができることは、治療中や治療後の痛みの軽減に大きく役立ちます。今までは小さく、また暗くて見えなかった部分の処置に顕微鏡を使うことは、痛みも少なく、長持ちする治療になることがお分かりいただけたでしょうか。
(文=山口義徳)
山口義徳(やまぐち・よしのり)
CT&マイクロ治療センター山口歯科クリニック院長。1992年、日本大学松戸歯学部卒業。97年4月、恵比寿に山口歯科クリニック開設。2010年、恵比寿にて移転し、保険外診療所としてオープン。所属学会は、日本顕微鏡歯科学会(認定医)、日本抗加齢医学会(認定医)、日本口腔インプンラント学会(会員)、日本歯内療法学会(会員)、日本顎咬合学会(会員)。