日本で顕微鏡歯科は普及するのか?
“見える治療・魅せる治療”をコンセプトに歯科用顕微鏡をいち早く取り入れた「デンタルみつはし」の三橋純院長。歯科用顕微鏡を導入した頃は苦労も多かったと明かす。顕微鏡を使っての診療には、それなりの技術が必要とされた。買ったからすぐに使えるようになるほど簡単なシステムではなかったのだ。
「20倍に拡大された口の中を見ながらの治療ですから、細かい動きをするとき、指先の感覚と自分の視覚からの情報をうまく合わせる必要があります。初めての感覚なので慣れるまでには相当な時間がかかります。また拡大して見えるので、相対的に病変が大きくなり慎重な治療をするための処置の量も自然と増える。当然、時間も長くかかる。質の高いものを目指すという観点で導入したものの、慣れるまでは本当に大変でした」
しかも、三橋氏が導入した当時は歯科用顕微鏡についてのマニュアルやノウハウを記した書籍といった情報も少なかった。
「使っている人自体が少なかったので仕方ないですけどね。歯科用顕微鏡についてのセミナーもほとんどなかったのです。多くの技術は自分で開発するしかなかったので無我夢中でした。幸運だったのは、開業当時はまだ患者さんも少なくて時間を持て余していたことです。一人の患者さんに時間をかけられる余裕があったのです。アメリカで勉強されてきた先生たちがたまにセミナーを開催してくれました。それを受講して新しい技術を学ぶ。この繰り返しでした。そのうち、自然に扱いにも慣れていきました」
現在は自身の経験をもとに自らセミナーを開いて歯科用顕微鏡を扱う技術を指導する側に回っている。その中で気づいたことだが、導入した歯科医院が実際の治療で顕微鏡を使いこなしているとは限らず、とても残念なことだが、宣伝に使われるだけになってしまっていることが多いことだ。そのため、患者さんがこれを見極めるための一助として立ち上げた「顕微鏡歯科ネットワークジャパン」では一般の方向けに顕微鏡歯科治療を判りやすく紹介する無料セミナーも実施している。そして日本顕微鏡歯科学会の理事としての活動を通じて、顕微鏡歯科治療の普及や認知の向上、会員相互の治療技術の向上にも力を入れている。しかし、顕微鏡歯科に取り組む歯科医院は少ないというのが現状だ。