インタビュー「顕微鏡が変える歯科治療」第1回 デンタルみつはし・三橋純院長

歯科の“顕微鏡治療”はドクターの目を補い患者の満足度も上がる!

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歯科医院「デンタルみつはし」の三橋純院長

 世田谷区・下高井戸にある歯科医院「デンタルみつはし」は”見える治療・魅せる治療”をコンセプトに、患部を肉眼の約30倍で拡大できる歯科用顕微鏡をいち早く取り入れた最先端の歯科治療を行っている。
 
 歯科用顕微鏡の日本での普及率は、まだ約5パーセント。院長の三橋純氏はその普及にも情熱を注ぎ、認定医により構成される任意のグループ「顕微鏡歯科ネットワークジャパン」の設立発起人の一人となり、一般人向けの顕微鏡歯科の啓蒙セミナーや、導入を検討する歯科医院へ向けたセミナーを開催したりしている。
 
 歯科用顕微鏡は、肉眼では確認できないような小さなムシ歯を早期に発見できるほか、補綴(被せモノ)治療もわずかな隙間さえも生じさせず、正確で精密に行える。また、診療中の口腔内の様子を患者に見せながら診療が行えたり、治療経過を録画して患者とのコミュニケーションに生かすことも可能だ。普及が進めば歯科診療の質を大きく向上させることができる。

顕微鏡治療をはじめたきっかけ

 新潟や東京・大田区などで歯科医師としてのキャリアを積んだ三橋氏が、下高井戸に「デンタルみつはし」を開業したのは2000年。しかし顕微鏡自体に初めて出会ったのは開業5年前の1995年、ウィーン大学の歯学部に勉強に行ったときであった。翌年、東京歯科大学の中川寛一氏(元教授)が開いた歯科用顕微鏡についてのセミナーに参加し、さらに興味を持った。しかし、すぐに導入というわけにはいかなかった。
 
「当初はピンと来なかったのです。顕微鏡のことはわかったけど、そんな細かいことまで見えたところでどうするの、って。しっかり噛める、とか、全身とのバランス、とかのほうがもっと大事でしょ、って。そして日々の診療に追われ、顕微鏡のことを忘れかけていた頃に、開業の時期が近づいて来て、準備を進めるうちに歯科用顕微鏡の記事を読み「これはやはりオモシロそうだなって」
 
 歯科用顕微鏡を取り扱っていた日本の会社は、当時は数えるほどしかなかった。1999年12月、三橋氏は家族を連れて上野動物園に行く途中に、御徒町にあったその中の一社を訪ね、そこで改めて歯科用顕微鏡と向かい合った。

「小学2年生の長女の歯を見たんですよ。まだ生えたての娘の歯を顕微鏡で見てとても感動したのです。ものすごく綺麗なだって。それまで十何年歯医者をやってきて毎日のように色々な人の歯を見ていましたが、歯を20倍もの倍率に拡大して見る機会はなかったんです。その時に初めて、今まで歯を見えていたつもりでいたけれど、自分は何も見えていなかったんだと気付いたのです。
 
 歯科用顕微鏡を使うことで、視界がこれまで知り得なかった部分まで見ることができる。三橋氏は歯科用顕微鏡の導入を決める。

「ジャスト・フォール・イン・ラブですよ。実際に自分の目で見て、この顕微鏡の世界で仕事がしたいと思ったのです。我々歯科医師は大学で大きなスクリーンに映し出された歯の構造やムシ歯の進行具合を見て勉強していました。しかし、いざ臨床現場に出ると、いつも小さな口の中を必死に覗き込むだけ。ムシ歯らしいところを見つけても、削るべきなのか迷ったりして、念のため削ってみようか、みたいな感じでね。大学で習って頭の中だけで理解していたような知識も、顕微鏡を通して見ることでようやく目の前の光景と一致したような気になりました。」
 
 導入を決めたことで歯科用顕微鏡の可能性に改めて気づいた。
 「歯科用顕微鏡はドクターの目を補ってくれるもの。我々の診療は外科処置の分野がほとんどです。現場では見て行うことがほとんど。歯科用顕微鏡を導入し、視覚を強化することで歯科治療の質を全て上げることができると思うのです」と三橋氏はその必要性を力説する。

 まだ3%程度という歯科用顕微鏡の日本での普及率が上がるとどうなるか? また、メリットは何か? 次回はその点について詳述する。
(インタビュー・文=名鹿祥史)

三橋純(みつはし・じゅん)

医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし 理事長。1989年、新潟大学歯学部卒業後、東京歯科研究会、三橋歯科医院(新潟市)、荒木歯科医院(東京都大田区)を経て2000年にデンタルみつはし開業。2006年、日本顕微鏡歯科学会理事、2009年、日本顕微鏡歯科学会副会長、2010年より「顕微鏡歯科ネットワークジャパン」発起人・認定医。主な著書に『顕微鏡歯科入門』、月刊「歯界展望」別冊『顕微鏡歯科を始めよう』、『写真でわかるラバーダム防湿法』、その他、雑誌への掲載論文多数。

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