シリーズ「これが病気の正体!」第13回

【閲覧注意】巨大血腫で脳が変形~脳出血が起きると脳はこうなる

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無治療が招いた男性(56歳)の死亡ケース(次頁にはグロテスクな画像が含まれます。閲覧にはご注意ください)

【閲覧注意】高血圧がもたらす脳出血~血圧コントロールで防ぐの画像2

【閲覧注意】高血圧がもたらす脳出血~血圧コントロールで防ぐの画像3

 掲載画像は、56歳・男性の例である。8年前より「高血圧」を指摘されていたが、「無治療」だった。競輪観戦中に突然「意識障害」をきたして倒れ、救急車で搬送されて来た。

 入院時、意識はほとんどなく、収縮期の血圧は実に300mmHgだった。

 頭部単純CTで、右大脳基底核に「出血巣」があり、脳室内にも出血が及んでいた。その結果、脳が反対側に押しやられるような変形(正中偏位)を認めた。脳圧を下げる薬が投与されたが、まもなく死亡した。

 剖検時の脳の割面(=水平断)肉眼像(=ホルマリン固定後)を示す。右被殻部を中心に径5cmの巨大な血腫が形成され、外側はくも膜下、内側は脳室内に出血(脳室穿破)が波及している。

 脳出血で右大脳半球は腫脹し、左側に著しくシフトしているのが判る。血腫の後部に「視床」が残っており、「外側型脳出血」と判定される。

 高血圧性脳出血は、高血圧のコントロールを心がければ、脳卒中のなかでも最も予防しやすい疾患である。降圧剤はきちんと飲み続けることが大切。飲んだり飲まなかったりすると、かえって危険が増しかねない。

 運悪く、脳室穿破をきたした脳出血の場合、このケースのようにきわめて不良である。多くの場合、手術はできない。
(文=堤寛)

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堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

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