連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第23回

タバコで起きる頭痛はニコチンによる血管収縮作用が原因 シックハウス症候群と同じ症状も

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

タバコの化学物質でシックハウス症候群と同様の症状も

 次に考えられるのが、無数の化学物質とのアレルギー反応による頭痛の誘発の可能性です。頭痛を誘発する化学物質として有名なのがシックハウス症候群です。

 シックハウス症候群とは、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する揮発性化学物質、石油ストーブ、ガスストーブ、タバコの煙などのなどによる室内空気汚染による健康影響が指摘されている疾患です。その症状は、目がチカチカする、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹などがある。人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応する人もいます。

 2000年前後から社会問題になったこの疾患は、新築の家などにホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機化合物が充満し、住みだした時から体の変調や頭痛を来すというものです。しかし、現在は法整備が進み、かなり改善されています。

 しかし、タバコの煙が室内に充満することで、同様のことが起こる可能性があります。さらに大気汚染やPM2.5の増加による頭痛の報告もあります(注2)。ですから、自分の知らないうちに、タバコだけでなく他の化学物質に曝露して頭痛を来している可能性があることにも注意してください。

 以上、タバコの煙に含まれる化学物質によって頭痛が誘発されることについて、ご理解いただけたと思います。現在、欧州や北米では、飲食店内でタバコを吸える国は少数なことから、日本の飲食店でも喫煙は制限されそうです。喫煙習慣がある人には、少し住みにくい世の中になっていますが、社会全体でルールを守って、頭痛を起こす方に配慮していただけると幸いです。
(文=西郷和真)

(注1)Tobacco, Nicotine, and Headache. Taylor FR. Headache. 2015 Jul-Aug;55(7):1028-44. Review.

(注2)Association between Fine Particulate Air Pollution and Daily Clinic Visits for Migraine in a Subtropical City: Taipei, Taiwan Chih-Cheng Chen, et al. Int J Environ Res Public Health. 2015: 4697–4708


連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

西郷和真の記事一覧

西郷和真
バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子