連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第23回

タバコで起きる頭痛はニコチンによる血管収縮作用が原因 シックハウス症候群と同じ症状も

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タバコと頭痛の関係は?ニコチンによる血管の収縮作用が原因!化学物質でシックハウス症候群と同様の症状もの画像1

タバコの煙で頭痛になるのはなぜ?(depositphotos.com)

 いよいよ4月になり、新大学生や新入社員になる人もいらっしゃると思います。そんな新しい気持ちで挑む勉強や仕事の環境に、タバコの煙があると困りますよね。

 さすがに最近は「室内では禁煙」の環境もかなり増えているようですが、大学や職場の喫煙スペースは、それほど減っていない印象を受けます。また東京オリンピック準備の一つとして、飲食店内でのタバコの規制問題が議論されています。そこで今回は、タバコと頭痛についてお話したいと思います。

ニコチンによる血管の収縮と拡張

 タバコの煙は片頭痛や群発頭痛の誘発因子の一つとして知られています。タバコを吸わない人は、タバコの煙に対して敏感な方が多く、より頭痛を誘発するようです。

 ご存知のようにタバコの煙には、たくさんの化学物質が含まれています。この物質がタバコ特有の「臭い」の元となり、その物質が反応して頭痛を誘発すると考えられています。

 医学的な分類である「国際頭痛分類」では、タバコによる頭痛は「物質による頭痛」に分類されます。タバコの有害な化学物質は、皆さんが知っているニコチンやタールだけでなく、硫化水素、アンモニアをなど数百種類から数千種類もあります。その中でも含有量の多いニコチンが、頭痛に関連しているとの報告があります(注1)。

 ニコチンは血管収縮作用があり、片頭痛の誘発因子の物質として知られています。ニコチンには交感神経を興奮させるアドレナリンと関連があるとされており、この作用が神経を興奮させて血管を収縮させると考えられています。

 よって、タバコを喫煙すると、一過性に血中のニコチン濃度が上昇し、血管が収縮します。しかしタバコがなくなると、今後はニコチン濃度が急速に下がり、血管が拡張します。この繰り返しが片頭痛や群発頭痛を誘発する因子となる可能性が考えられています。

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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