糖質制限には筋肉が必要
さて、それではどうして「筋肉量の少ない痩せた女性は糖新生がうまくいかない」のでしょう?
それに関するわかりやすい説明を、「たがしゅう先生」こと南鹿児島さくら病院神経内科医の田頭秀悟先生がされています。それを要約すると、筋肉量が多いと筋肉からのアラニンの放出量が増えて、それが肝臓での糖新生の原料となるので、糖新生が十分に行われます(「コリ回路」と呼びます)。
しかし、元々痩せていて筋肉量の少ない人がいきなり厳しい糖質制限をすると、アラニン不足で糖新生が不十分になるというものです。その結果、エネルギー不足で低T3症候群が誘導されるわけです。だから糖新生の足りない分の糖質を食べて補いましょうというわけです。
このことを別の角度から見ると、痩せた女性や小さい子供達が甘いものを好きな理由もわかりますね。筋肉量が少なくて糖新生能力が低いので食べ物から糖質を摂取したくなるのです。逆に、健康な男性が成長につれて甘いものが欲しくなくなる理由もわかりますね。筋肉が増えてくると十分に糖新生できるので、甘いものを欲しいと思わなくなるのです(個人差はあります)。
ですから、乳幼児で糖質制限を考える場合、母乳に含まれている乳糖程度の糖質摂取量から、筋肉量の増加に合わせて徐々に減らしていくことが大事です。筋肉量の少ない女性の場合、筋肉量を増やしながら糖質制限を徐々に進めていくことが大事です(筋肉が増える分、体重は増えるかもしれませんが)。
徐々に糖質摂取量を減らす方法としては、緩やかな糖質制限である「山田式糖質制限」や、まずはたんぱく質と脂質に体を馴らす「MEC食」の導入がお勧めです。また、「食べ順ダイエット」をそこに組み合わせることで食後高血糖を回避できます。
これらの緩やかな糖質制限の導入は、筋肉量が少ない以外の理由で糖新生能力の低い人にも適した方法です。今回の記事と関連して、“体質的に糖新生能力が低い”方々の存在について次回は触れてみたいと思います。
(文=吉田尚弘)