連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第14回

子供が「糖質制限」しても安全か?30年で「子供の生活習慣病患者」が世界中で激増

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
子供が「糖質制限」しても安全か? この30年で「子供の生活習慣病患者」が世界中で激増しているの画像1

高糖質・低脂肪食が子供の健康にも悪いことは明らか(depositphotos.com)

 子供の糖質制限に関して、「子供の糖質制限は理論的に何の問題もない」と私は考えます。私に小さな子供がいたとしたら、積極的に「低糖質・高たんぱく・高脂質」の食事を与えます。

 しかし、子供の糖質制限を激しく否定される人々がいらっしゃるのもわかっています。「糖尿病の大人ならともかく、育ち盛りの子供はバランスよく一定量の糖質を毎日食べなければならないに決まってる! 常識にエビデンスなんて必要ない!」「子供に糖質制限して成長が止まったらどう責任を取るんだ! 絶対に大丈夫だというエビデンスを見せろ!」と激しいお言葉をいただきます。

 ということで、この問題に関していくつかのことを述べます。

①子供が糖質制限しても何の問題もないという理論的な理由
②この30年で子供の2型糖尿病患者が増えている現実
③離乳食で肉を食べさせると身長はむしろ伸びるという研究結果

 これらについて読んでいただいた上で各自でご判断ください。

人類が毎日たくさんの糖質を食べるようになったのは最近のこと

 現生人類の祖先が草原で採集生活を始めたのは、少なく見積もっても250万年前です。そしてホモ・サピエンスはおよそ25万年前にアフリカに出現しています。7万年前ころからの氷河期にはマンモスなどの大型獣の狩猟も目立ってきますが、それまでは、昆虫や小動物、肉食獣の食べ残し、魚介類などの採集生活、要するに「高タンパク・高脂質食」です。草木の新芽、果実や穀物などの糖質は、一部の季節にたまにしか手に入りません。

 つまり人類は250万年、8万世代以上にわたって、高蛋白質・高脂質で低糖質な食生活を続けながら繁栄を続けてきました。体を作っている栄養素は「たんぱく質」と「脂肪」で、糖質はごくわずかですし、赤血球や脳のエネルギーとして必要なブドウ糖の量も1日150gもあれば十分で、すべてたんぱく質と脂質から体内で作り出せます(糖新生)。つまり、糖質をまったく摂取しなくても問題なく生きていけます。実際に現生人類の消化管の構造は肉食動物に近いものです。

 一方、人類が農耕を始めたのはメソポタミアで1万2000年前、インドや中国などで6000〜8000年前、日本での農耕は4000年前、稲作は3000年前からです。一般庶民が毎日米を食べるのは江戸時代中期からで、世界的に見ても同様です。

 穀物が豊富な食卓になってから数百年から数十年の歴史しかありません。ほんの3〜10世代かそこらです。我々が糖質をたくさん食べるようになったのはごく最近の話であり、高糖質・低脂肪食には歴史もないのです。子供だけは例外的に高糖質食を何万年も続けてきたという歴史も、そうすべきだという科学的根拠もありません。

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

神戸市垂水区 名谷病院 内科勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

吉田尚弘の記事一覧

吉田尚弘
美容界で異彩を放つ「炭酸ジェルパック」とは?細胞からのアンチエイジングとケアが大切
インタビュー「炭酸美容とはなにか?」後編:メディオン美容皮膚クリニック院長・日置正人氏

前編『炭酸ケアの第一人者、褥創の治療経験から生まれた「炭酸ジェルパック」』

美容の世界でも異彩を放つっている「炭酸ジェルパック」。 皮膚科・内科の医師として長年、炭酸の医療的な研究に携わり、その研究の成果として画期的な美容素材「炭酸ジェル」を開発した日置正人医師に、その開発の過程や効果について聞いた。

Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

鈴木龍太

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

横山隆