連載「死の真実が〈生〉を処方する」第44回

シートベルトとの接触で痛み、腸と皮膚の境界から出血…気づかれにくい「人工肛門」の苦労

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周囲の人は気づかない「人工肛門」の苦労〜真のバリアフリー社会の到来のためにの画像1

周囲の人は気づかれにくい疾患を持った人に配られる「ヘルプマーク」(東京都保健局のHPより)

 最近、東京都内を歩いていると、よく見かけるようになった「ヘルプマーク」――。

 赤字に白色で「十字」と「ハート」をあしらったこのマークは、義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の患者、精神障害や知的障害、または妊娠初期の人などに、ステッカーやストラップなどにして配布されています。

 援助や配慮を必要としていることが外見ではわからないこれらの人々が、周囲の人々に配慮が必要なことを知らせることで援助を得やすくなるよう、2012年に東京都が作成。現在、東京都を含む14都道府県で導入が進んでいます。

 ちなみに東京都内では、都営地下鉄各駅の駅務室(例外あり)、都営バス各営業所、東京都心身障害者福祉センター、都立病院、東京都保健医療公社の病院などで配布され、都営地下鉄や都営バスなどの優先席にステッカーが標示されています。

 このように、「一見しただけではわからないハンディキャップ」を身体に持った人は少なくありません。たとえば、人工肛門を付けている人や慢性賢不全で血液透析を余儀なくされる人などもそうです。

 今回は、このような「内部障害」の人、特に「人工肛門(オストメイト)」への支援の実態を紹介します。

内部障害は気づかれにくいもの

 厚生労働省では、在宅の障害者や障害児の生活実態とニーズを把握する目的で平成23(2011)年に「生活のしづらさなどに関する調査」を行いました。この結果によると、18歳以上の在宅の身体障害者は約379万1000人で、平成18(2006)年の調査に比べて8.8%増加していました。

 この数値は、統計の記録がある昭和45(1970)年から増加し続けています。障害の種類別では、肢体不自由が166万7000人と最も多く(44%)、内部障害が92万1000人(24.3%)、聴覚言語障害が31万2000人(8.2%)、視覚障害が31万1000人(8.2%)と続きます。

 近年の高齢化を反映してか、在宅の身体障害者の約8割が60歳以上。肢体不自由の障害者の方は、装具や車椅子などを用いているため、ほかの人が気づきやすいものです。したがって、困っている姿を見れば、手を貸してくださる人も多いと思います。

 しかし、内部障害は、一見しただけではなかなか気づかれにくいものです。

身体障害者手帳で受けられるサービスとは?

 内部障害とは「心臓、腎臓もしくは呼吸器または膀胱もしくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫もしくは肝臓の機能の障害」と定義されています。

 具体的には、心不全、腎不全、呼吸不全、人工肛門、腸痩、小腸の大量切除を余儀なくされる病態、永続的に小腸機能の著しい低下を伴う小腸疾患、HIVウイルスによる免疫機能障害、肝不全の状態です。このような人も「身体障害者」と定義されます。

 内部障害も含め、身体上の障害がある人に対しては、都道府県知事、指定都市市長、または中核市市長が「身体障害者手帳」を交付します。この手帳は、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受ける証明書です。

 障害の程度は「身体障害者程度等級」に基づき、種類別に重度の「1級」から軽度の「6級」が定められています。ちなみに、肢体不自由には等級上で「7級」が存在します。しかし、7級の障害単独では身体障害者手帳が交付されません。7級の障害が重複して6級以上となり、交付されます。

 たとえば、最も重い「1級」に関する記載は「ペースメーカを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの」「血液浄化を目的とした治療を必要とするものもしくは極めて近い将来に治療が必要となるもの」となっています。

人工肛門だけであれば「4級」

 ちなみに、人工肛門だけあれば「腸管又は尿路変向(更)のストマをもつもの」という範疇で「4級」と認定されます。

 このように、個々の状態について、認定表に基づき判断されます。この手帳の申請には、当然、医師の診断書が必要となります。

 手帳を持っていると、さまざまな福祉サービスを受けることができます。その内容も、1級および2級と3級以下では変わります。具体的には、所得税・住民税・相続税の障害者控除、贈与税の非課税、公共交通機関の運賃割引、公共施設の入場料割引、携帯電話の通話料割引などです。

 このような配慮がされる背景には、「障害を持つ人が社会に容易に参加できるようにする」というバリアフリーの考え方があります。

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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