連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第15回

妊娠中に糖質制限して大丈夫?「つわり」のメカニズムと糖質制限の安全性

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妊娠初期の胎児を育てるのは母親の皮下脂肪であって食べ物ではない

 妊娠初期の母親を絶食に追いこむホルモン動態がつわりの原因だと考えるのはおかしいでしょうか?

 考えてみてください、野生の哺乳類や、狩猟採集生活時代の人類は現代人のように毎日糖質を摂取することはできません、食事からのエネルギー供給は不安定なものです。だからこそ我々は体に体脂肪を蓄えて、飢餓に対処しているのです。

 そうであるならば、大事な大事な胎児の初期発生の時には、食事からとるしかない不安定な糖質エンジンなどではなくて、母親の皮下脂肪を燃料として動かせるケトン体エンジンを動かす方が安全ですよね。

 つまり、人間に限らず哺乳類のメスがみんな丸みを帯びたからだなのは、子供を育てるために皮下脂肪を蓄えているからなのです。また、子供を育てるスペースが必要なので、生殖年齢のメスにはふつうは内臓脂肪はつきません。この特徴的な脂肪のつき方は排卵できる時期の卵巣のホルモンがコントロールしていることは良く知られています。

結論:妊娠する前に高糖質食をやめてたんぱく質と鉄分をしっかり摂りましょう

 結論です――。

 つわり(妊娠悪阻)は妊婦さんの体が妊娠とともにケトン体エンジンにきり替わるために必要な体の反応です。糖質エンジンを抑えて、さらには短期間ですが食欲を抑えて絶食することでケトン体エンジンを回そうとする結果、引き起こされる反応なのです。

 人類だけでなく、すべての哺乳類のメスが、妊娠とともにケトン体エンジンがフル回転するようにホルモンで制御されるのです。ふだんからケトン体エンジンも動かしている野生動物はつわりの症状は軽く、短期間の食欲低下につながるだけだと思われます。

 それであるならば、対処方法はわかりますよね。

 妊娠前から、必要となればいつでもケトン体エンジンを回せる体になっておくのが大切なのです。たんぱく質と鉄分をたっぷり取り、その分、精製炭水化物の摂取は控えめにすることだけは、妊娠前から心がけておいてください。そうすることで、必要となればいつでもケトジェニックに切り替えられる体の準備ができています。妊娠悪阻は軽いもので済ませられるはずです。

 妊娠中の糖質制限が何も問題がないこと、つわりがなぜ起こるかを考えてみれば明快だったというわけです。以上は筆者の仮説であることをお断りしておきます。
(文=吉田尚弘)

※詳細記事は以下
低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告

(註1)Ketone body elevation in placenta, umbilical cord, newborn and mother in normal delivery
http://www.toukastress.jp/webj/article/2016/GS16-10.pdf

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吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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