80kgの人なら4kg減で乳がんの発症リスク12%低下(depositphotos.com)
20世紀半ば以来の世界的な医学の進歩で、心疾患や脳血管疾患など、多くの病気の死亡率は大幅に低下してきた。一方、この60数年で「がん」の死亡率はあまり変わっておらず、がん研究者の戦いは依然として続いている。
近年は特に「糖尿病」や「肥満」と「がん」の関係について、世界中で精力的に研究が行われてきた。ちなみに、世界の成人糖尿病患者は約4億2200万人、過体重(BMI25以上)または肥満(BMI 30以上)の成人は約20億人と推定されている。
そして最新の研究では、2012年に発症したがんの6%が(世界175カ国)、糖尿病や肥満が原因であることが判明。『The Lancet Diabetes & Endocrinology』(2017年11月28日オンライン版)で報告された。
年間80万人が肥満と糖尿病で「がん」に!
論文を発表したのは英インペリアル・カレッジ・ロンドンのPearson-Stuttard氏らの研究グループ。これは、糖尿病と肥満ががんを引き起こすことを、初めて定量化して確かめた研究だ。
彼らは世界175カ国から、2002年の糖尿病と過体重・肥満の有病率を推定するデータと、糖尿病や過体重によるがんの相対リスクに関するデータを収集。世界各地域のがん罹患や死亡に関する疫学データを用い、2012年に発症した12種類のがんついて、糖尿病や肥満との関連を推計した。
解析の結果、2012年に新たに発症したがんのうち、約2%の28万100件は糖尿病を原因とし、約4%の54万4300件は過体重・肥満を原因とするものだった。また全体の5.6%は、糖尿病と過体重・肥満の両方が原因であり、年間で79万2600件に上ることがわかった。
なかでも「肝臓がんの24.5%」「子宮内膜がんの38.4%」は、糖尿病や過体重・肥満が原因と考えられ、特に影響が大きかった。
また、糖尿病に関連したがんの26.1%と、過体重に関連したがんの31.9%は、1980〜2002年にかけて糖尿病や過体重が増加した影響によるものと考えられた。
こうした糖尿病や過体重・肥満によるがん症例の多くは経済的に裕福な欧米各国で多くみられ、東アジアと東南アジア諸国がこれに続いていた。
筆頭著者であるPearson-Stuttard氏は「肥満や糖尿病の患者を減らさなければ、これらのリスク因子によるがん発症は世界的に増加し続けるだろう」と警鐘を鳴らし、糖尿病と肥満の予防とスクリーニング対策を強化するよう努力するべきだと話す。