いま流行の「肩甲骨はがし」とは?(depositphotos.com)
最近、「肩甲骨はがし」という言葉を見聞きしたことはないだろうか? マッサージやストレッチ業界の今のトレンドキーワードのようだ。
そのネーミングからは、多くの現代人が悩む「肩凝り」を治す絶対的な最終手段のようなイメージを抱かせる。想像してもらいたい。何しろ「肩甲骨」が「はがれる」のである――。最初に断っておくが、「肩甲骨ははがれない」。
「肩甲骨はがし」は、キャッチーな造語だ。身体の専門家からすると、肩甲骨がはがれたら大変なことだ。では、巷で話題の「肩甲骨はがし」とはなんだろう?
肩甲骨は「背中にある腕と肩の間の羽のような骨」。この骨の特徴は、関節となる骨は「鎖骨」だけ。ほかは「靭帯」「筋肉」で支えられているという点だ。自由な動きが可能な反面、筋肉で支えられているから、常に筋肉に負担がかかることになる。
そのため、この筋肉が固まったりすると、肩甲骨が自由に動かせず、「張り付いている」感覚になる。そこで、肩甲骨周りの筋肉をほぐし、その本来の動きを取り戻すことを「肩甲骨はがし」とキャッチーに表現しているのだろう。
なぜ肩甲骨が張り付いたようになるのか?
前述のように、肩甲骨はほとんどが筋肉によって支えられている。筋肉は動かさないと(=収縮させないと)、血行が悪くなり固まってしまう。すると、肩甲骨はますます動かしづらくなるため、その結果、肩甲骨が張り付く――という悪循環に陥る。このようになる原因はいくつかある。
①姿勢
肩甲骨周囲の筋肉を使わなくなる原因、そのひとつは「姿勢」だ。たとえば「猫背」。猫背は、胸椎が後弯することで生じる。猫背になると、自然に肩甲骨は外側に移動する。この状態は、そもそも肩甲骨が動かしづらく、当然周囲の筋肉も使えず、ますます<固まる>ことになる。
②筋肉の衰え
肩甲骨は筋肉によって支えられているため、その筋肉が衰えると肩甲骨周りがすぐに疲れてしまう。また、肩甲骨を支える筋肉は、肩甲骨の上下左右にバランスよく付いている。だが、それが崩れてしまい一部の筋肉で支えるようになると、そこに負担がかかってしまう。
実際に多いのが、肩甲骨の内側や下側の筋肉が衰えて、上の筋肉だけで支えているような状態だ。肩甲骨を支える上の筋肉は「僧帽筋上部繊維」といい、いわゆる私たちが「肩凝り」を感じる筋肉だ。
ここがよく疲れている人は、肩甲骨を支える役割を、この筋肉だけで行ってしまっているのかもしれない。