肩こりとは、肩や首の筋肉が緊張し、疲労した状態のことをいいます。一時的な症状の緩和のためのマッサージでは「肩こり体質」は改善しません。同じ肩こりでも、骨や関節の異常や内臓疾患などによる肩こりの場合もあります。
肩こりの悩みは深刻です。最近は中高年だけではなく若年者にも増えていて、日常生活に支障をきたすほどツライという人もいます。多忙な毎日、ふと気づいたら、一日中ほとんど同じ姿勢でパソコンの画面を見つめていた、ということもあるのでは? そんなとき、多くの人が目の疲れや肩こり、腰の痛みを感じているはずです。
デスクワークが中心になった多くの現代人は、深く大きな呼吸をせず、胸で小さく息を吐くため、胸郭が薄くなり、自然と背中が丸まった姿勢をとることが多くなりました。背中が丸まると、頭は前に出て顎が上がった状態になってしまいます。首や肩は重い頭(約6kg)を支え、それだけでも大きな負担になっているのに、姿勢が悪いとさらに負荷がかかってしまいます。
マラソンなどでバテたときに「顎をだす」と言うことがありますが、現代人は日常生活においても、顎が上がった窮屈な姿勢での場面が増えています。それだけではありません。私たちが息抜きのつもりで何の気なしに見ている雑誌やテレビなどからも、おびただしい量の視覚・聴覚情報が入ってきているため、カラダと心の緊張が本当に解ける時間が少なくなっています。肩こりは、まさに現代人の宿命ともいえる症状なのです。
筋肉は、適度な休憩と仕事のリズム(伸びたり縮んだり)が適切な状態であれば疲労しにくいのですが、肩こりが起きるとき、例えば30分間パソコンに向かってキーボードを打ったときを考えてみると、肩の筋肉はほとんど伸び縮みしていません。同じ姿勢を保ち、筋肉が伸縮せずに、緊張(収縮)状態を続けたことで肩こりが発生するのです。
このほか、片目の視力が弱いため無意識のうちにもう片方の目ばかりで見る、カラダをいつも同じ方向にひねってテレビを見るといった癖や姿勢の悪さも、筋肉に過重な負担が続くために肩こりの原因となります。筋肉のエネルギー源である酸素と栄養は血液が運んできて、同時に筋肉中に発生した疲労物質(老廃物)も運び出しています。この搬入・搬出がうまくいかないと、さらに余計な疲労物質が溜まってしまい、これが短期的な肩こりとなってあらわれます。
こうした肩こりなら数日で解消しますが、慢性の疲労が何ヶ月も続くと、筋肉のタンパク質自体が変性して元に戻れなくなることもあります。こうなると、筋肉の再生と血液の循環状態の安定まで長期の治療が必要となります。
筋肉が「一定の姿勢を維持する仕事」をしたことで発生するのが肩こりなので、単純に考えれば、緊張から開放し、血液の流れを良くすれば、肩こりは解消されます。たとえば、大きく伸びをする、あくびをする、ゆっくりと肩を回す、軽く体操するなど。疲労物質を押し出し、新たに酸素と栄養を供給するためには、大きく、ゆっくりとした筋肉の伸び縮みを、一定時間ごとにこまめに行うと効果的です。
休み時間や仕事中に疲れを感じたときには、できるだけ窓から遠くのものを見るように心がけ、視神経からくる緊張を解消したり、精神的なルフレッシュを心がけましょう。
さらに、一日の終わりには少しぬるめのお風呂に入って、カラダの芯まで温めて血行を促進させる。ホッとするつかの間のリラックスタイムにもなります。
また、肩こりの筋肉が休めるはずの就寝時間も重要です。その日の疲れはその日のうちに解消できるよう、布団の上で体操をしましょう。カラダに合わない枕や、柔らかすぎるふとんなど、知らず知らずに負担となっている場合があります。寝具選びも慎重にしたいものです。
最近、オフィス街などで、簡易マッサージが静かなブームになっています。肩を揉んでもらうと、確かに気持ちのよいものです。でも、マッサージは一時的な症状の緩和にはなっても肩こり体質を改善することはできないことを知っておきましょう。「マッサージしてもらったから大丈夫」「これでしばらくはラクになる!」と安心していても、遠からずまたつらい肩こりがやってきます。根本的に改善しない限り、ずっと肩こりとつきあうことになりかねません。
肩こりは、「このままでは大変だぞ!」という、カラダのサインなのです。マッサージからさらに一歩すすめ、「肩は重たい頭や腕を支えているのだから、それを維持できるだけの筋肉を保とう」と考えるようにしたいものです。
同じ肩こりでも、痛みがあまりにも長く続く場合や吐き気やめまい、耳鳴り、また胸部や背中の痛み、手足のしびれなどを伴う場合には、骨や関節の異常、もしくは内臓疾患による肩こりの場合があります。素人判断が大変難しいので、強い痛みに不安を感じたときは、かかりつけ医に相談してください。
また、ストレスは私たちのカラダにいろいろな悪影響を及ぼしますが、肩こりもストレスが原因という場合もあります。嫌なこと、辛いことを我慢しているとき、人間は自然と筋肉を収縮させます。これが筋肉の緊張となり、肩こりにつながります。心身の健康のためにも、意識して深い呼吸をするなど上手なストレス解消法を見つけたいものです。
●体操1:会社の休憩時間をつかって
▶︎足を軽く開き、壁に背を当てて立つ。
▶︎頭の後ろに枕があるつもりでアゴを引き、肩をグーッと壁に押し付けます。
▶︎何回やったかよりも、何秒頑張れたかが大切。就寝前にふとんの上で実行するのも効果的です。
●体操2:通勤途中に
▶︎吊革につかまっていないほうの肩も、軽く息を吸ったまま同じようにグッと持ち上げます。普段と違う方向に筋肉を動かしてあげることが、筋肉のリフレッシュになります。
▶︎これと同じ原理で、肩にバッグのショルダーをかけている人は、意識して、もう片側の肩も上げてみましょう。
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