連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第30回

ヨガで腰痛が治った!?「腰痛」に効く人、効かない人の違いはどこに……

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨガで腰痛がなくなった!?「腰痛」に効く人、効かない人の違いはどこに……の画像1

腰痛の治療は、まずはなんでも良いから体を動かすことからはじめてみよう(depositphotos.com)

 最近、<慢性の腰痛がある人が、ヨガを行うと理学療法と同程度の症状の改善がみられた>という論文が報告された。

 この研究の内容を要約すると、12週間にわたって「ヨガ」を行ったグループと「理学療法」を行ったグループは有意に疼痛が軽減されて、その成果は1年間維持されたというものである。

 しかしながら、その中には全く効果が出なかった人々も存在しており、ヨガと理学療法、どちらも完璧な介入方法ではないということも付け加えられていた。

 この論文の報告より、どのようなことを考えられるだろうか? 

 私は理学療法士だが、「ヨガよりも理学療法の方が優れている!」と主張するつもりはない。この報告から示唆されるのは、極端にいえば「腰痛が改善する人は、理学療法でもヨガでも、なんでも良い」ということだ。

 つまり、<介入する>こと自体で効果が出るのだ。

 逆に改善しない人たちは、社会的な要因や心理的な要因によって腰痛が慢性化している可能性がある。ヨガや理学療法のような介入ではなく、全く違うアプローチをする必要があるかもしれない。

痛みの感じ方は人それぞれだから厄介

 「疼痛(とうつう)」というのは主観的なものだ。客観的に評価することができない難しいものである。

 たとえば、AさんとBさんを「5」の力で殴ったとしよう。ところが、Aさんは「7」の痛みを感じたと主張し、Bさんは「4」しか痛くなかった―-ということがザラ。痛みの感じ方は、人それぞれである。

 痛みは定量化できないため、非常に厄介なのだ。

 それと同じく、治療に対する反応性も人それぞれだ。同じヨガや理学療法を行ったとしても、「ものすごく効いた!」人もいれば、「全然効かない」という人もいる。前者は「思い込みが激しい」、後者は「鈍感」――というわけではない。

 本当に違うのだ。これを医学的な専門用語で「治療反応性」という。

 薬でも、効きやすい人と、効きづらい人がいるのを想像するとわかりやすいだろうか。はたまた、同じお酒の量を飲んでも、酔っ払う人と、酔わない人がいるのと似ているといえば、さらに想像がしやすいかもしれない。まったく原理が異なることなので、あくまでたとえとして。

 よって、前述の研究結果は、治療反応性によって「効いた人には、ヨガでも理学療法でも効果があった、なぜなら治療の反応性が高い人だから」「どちらも効かなかった人は、治療に対する反応が悪いから」ということになる。

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

三木貴弘の記事一覧

三木貴弘
がんになってもあきらめない妊活・卵巣凍結 費用は卵巣摘出に約60万円、保管は年間10万円
インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」後編・京野廣一医師

がん患者への抗がん剤による化学療法は妊孕性(妊娠のしやすさ)を低下させる。がんにより妊娠が難しくなる患者を支援するため、2016年4月に「医療法人社団レディースクリニック京野」が、治療前に卵巣を凍結して保存しておく「HOPE(日本卵巣組織凍結保存センター)」を設立すると発表した――。医療法人社団レディースクリニック京野理事長の京野廣一医師に卵巣凍結の仕組みについて訊いた。
前編『「がん」になっても妊娠・出産をあきらめたくない女性のための「卵巣凍結」とは?』

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大…

吉田尚弘

市民のためのがん治療の会代表。舌がん治療による体…

會田昭一郎

2017年4月より、はるひ呼吸器病院(愛知県)病…

堤寛