連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第28回

慢性的な腰痛では<コルセット依存症>に気をつけろ! 心理的な安心感から依存に……

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コルセットの正しい使い方は?(depositphotos.com)

 腰痛になった人ならコルセットを病院から処方されたり、または自分で購入し使用したことがあるのではないだろうか? それくらい腰痛とコルセットの関係は強い。

 このコルセットについて、未だにさまざまな噂レベルの神話から間違いまで世の中にはびこっている。ここで腰痛とコルセットについて、もう一度考えてみよう。

コルセットをつけると痛みがとれる?

 Q:コルセットをすると体幹の筋力が弱くなる?

 A:「コルセットをつけすぎると背中とお腹の筋力が弱くなるからつけすぎはダメですよ」と言われた人はいないだろうか? 結論から言うと、コルセットを使用することで筋力が低下するというエビデンスは現在のところない。

 筆者は最近『TheSpine Journal』(北米脊椎学会の公式雑誌)にコルセットと体幹筋群の筋力低下の関係性について論文を発表した。その内容は、コルセットの長期使用と体幹筋群の筋力低下について過去の論文を体系的にレビューしたものだ。

 その結論は、「長期間のコルセット使用において体幹筋群の筋力低下は生じない」というものだ。つまり、コルセットを長期間使用していることと筋力が低下することは今のところ関係がない。

 Q:コルセットをつけると痛みがとれる?

 A:『コクランライブラリー』という世界中の論文を集めて情報を整理するデータベース集がある。科学的根拠に基づく医療を広めるのが目的だ。

 その中では、<腰痛に対するコルセットの効果>がまとめられている。その論文によると、現在のところ「コルセットをつけることで腰の痛みが改善する」という報告は残念ながら存在しない。

最終的にはコルセットからの脱却を

 Q:コルセットはどのような時に使用すべきか?

 A:コルセットには痛みを改善する効果はないが、一方で「日常生活の動きの改善には効果的である」という報告がされている。これは、コルセットをつけることで、腰部を必要以上に動かすことを避け、腰の負担を減らすことができ、そのことが結果的に腰痛の回復を早めるからだ。

 急性腰痛の時にコルセットを着用すると、つけていないグループより早く仕事復帰が可能となった――という報告もある。

 また、腰の手術の後、コルセットを処方されることがある。これによって腰部を保護したり、腰部に負担をかける動作を避ける(コルセットが腰部の動きを強制的に制限する)ので有効かもしれない。

 腰部の手術には、腰椎を金具で固定する「固定術」がある。術後すぐに腰を曲げたり反らしたりすると、その固定が外れてしまうことがある。そこで、コルセットを着用して腰部を動かさないようにするのだ。

 医師によっては、コルセットを処方しない場合もある。これは手術した医師の考えがある程度反映されるからだ。そして処方された場合でも、一生つけるものではない。医師と相談した上で、最終的にはコルセットから脱却することが重要である。

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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前編『『人間の「脳」は7時間程度の睡眠が必要! 本当のショートスリーパーは100人に1人程度!?』』

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