雇用の安定が脳卒中リスクを低減させる?
しかし、専門家筋はこの最新知見が公表されても、さほど驚いた様子は見せていない。たとえば、マイアミ大学医学部のRalph Sacco博士(神経学会長)はこう述べている。
「今回の知見が示唆する点に(日米間の)文化的な違いが影響を及ぼしている可能性は否めないものの、ストレスを伴なう(失業などの)非日常的な出来事が血管リスクを左右しかねないという従来の研究報告とは一致してる」
一方、ニューハンプシャー州マンハセットのノースウェル健康神経科科学研究所の神経医、Anand Patel博士も、次の見解を述べている。
「日米間の財政状況や雇用状況などが異なるため、今回の研究成果を以ってして、それ米国人の健康リスクにも一般化すべきとは考えられない。が、さらなる研究を促す意義はあるだろう」
今回の研究に際しては、自発的に(=自己都合で)仕事を辞めた人や、リストラや解雇によって退職を余儀なくされた層を区別しているわけではなく、失業と脳卒中リスクの因果関係も示してはいない。
それでもEshaK氏らは自信を込めて、こう結論している。「何よりも雇用の安定こそが脳卒中リスクの低減につながる可能性があると考えている」。
2016年の世界失業率ランキング(対象:106カ国)によれば、日本は98位。アジア勢中、中国(86位)や台湾(92位)、韓国(93位)や香港(96位)よりも下回っている。
しかし、失業の影響による疾病リスクというのは「国別(の順位)」云々ではなく、あくまでも個人が見舞われる問題だ。基本的に職が安定し、当面の暮らしに心配がないという環境が理想的なのはいうまでもない。
(文=編集部)