連載「死の真実が〈生〉を処方する」第38回

車両火災が1日3件以上起きている! 人もクルマも高齢が事故原因に?

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古い自動車ほど火災事故が多い

 このようなトラブルは、古い自動車に多いのではないか? そこで、事業用バスの<平均車齢>を調べたところ、11.8年でした。全体的に車齢と発生件数の関係を調べたところ、車齢が平均以上のほうが件数が多いことが分かりました。

 そこで、車齢別の保有車両数を勘案して、1万台当たりの車両火災発生件数を調べたところ、平均車齢が0年や1年では発生がゼロ、車齢17年では17.7、19年では16.0と、明らかな差がありました。車齢が高いバスは、明らかに火災の発生件数が多いのです。

 次に、走行距離別に火災の発生件数を調べました。その結果、比較的走行距離が短い車両でも火災が発生していることが分かりました。

 ちなみに車齢ですが、貨物車では11.1年、乗用車では8.3年です。バスは長く利用されるのです。残念ながら、その結果として車両火災の発生件数も高く、事業用乗用車では1万台当たりの発生件数が0.25であるのに対し、バスは1.76です。

国土交通省による通達の効果は?

 平成27年末から平成28年2月初旬までに6件のバス車両火災事故が発生しています。国土交通省は、この事態を重く受け止め、平成28年2月19日に自動車局整備課長名で「事業用自動車の車両火災事故防止に向けた保守管理の徹底について」という文書を関連団体宛に発信しました。

 事故予防のために整備の徹底などを促したのです。

 車両火災の予防には、日頃からの整備や点検が重要です。特に車齢が長い自動車に起きやすいことから、このような車両はさらに徹底して行うことが重要です。定期的な整備や点検と、軽微な車両故障の際に、将来の大きな事故や火災を予防するよう心掛けてください。

 ちなみに、このことは車齢だけではなく、人の年齢にも当てはまります。年齢を重ねるとともに、心身の整備や点検にも時間を割いてください。

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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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