連載「死の真実が〈生〉を処方する」第36回

孤独死は若い人ほど発見が遅れる! 最も多い通報は「異臭がする」

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孤独死によって生じる3つの弊害

 孤独死が発生すると、どのような弊害があるのでしょうか? 社会的に次の3点があります。

①身元確認が必要になる
 死後変化が進行することで顔貌が変化し、親類が確認できないことがあります。指紋の登録があるのは一部の人ですし、ミイラ化や腐敗などで指紋の採取もできないことがあります。

 この場合、遺体から採取した試料と家族から得た試料との間でDNA鑑定を行わなければなりません。費用と時間を要することはお分かりいただけるでしょう。

②犯罪が隠蔽される恐れがある
 たとえば、何者かが侵入して殺害したとします。発見されるまで、犯罪の事実が確認できません。また、死後変化が高度になることで、遺体に存在していたはずの創傷が分かりにくくなります。したがって、犯罪が隠蔽されたり、事件の解決に支障をきたす恐れがあります。

③環境に悪影響を及ぼす
 先にお話した異臭だけではありません。腐敗が進行すれば、その周囲に体液や死体の一部が浸潤します。また、ハエが集まり卵を産むとウジが発生します。したがって、衛生状態を悪化させることになります。

孤独死を防ぐためには?

 では、孤独死を予防するにはどうしたらいいのでしょうか?

 高齢でも介護を受けていたり親密な付き合いがある人は、万一のことが起こっても誰かが間もなく発見してくれます。ですから、社会的に孤立している状態をなくすことが重要です。

 千葉県のある地域の自治会は、独居高齢者を見守るというルールを作っています。電気が消えたままである、洗濯物が2日にわたって干したままであるなどの時には、自宅を訪問することになっているそうです。その結果、具合が悪くなって倒れていたのを発見でき、一命を取り留めたということがありました。

 このような対策を地域で推進するのはいかがでしょうか。そうすれば不幸な孤独死は減少していくはずです。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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