米国のChoosing Wisely(賢い選択)キャンペーン
メディケアでは2019年から、医師の実施した医療の費用対効果により報酬を支払うとしており、病院に対しては疾患ごとの包括払い制度の導入も検討されている。
米国の医療費専門家である米ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学部(ボルチモア)教授のGerard Anderson氏は、著者らの見解に同意し、医師による医療費全体を見直すべき時期に来ていると指摘している。
米国では2010年ごろから、「米国内科試験委員会:American Board of Internal Medicine(ABIM)」が中心となって不要であるばかりか有害でさえありえるような治療介入の一覧を示すChoosing Wisely(賢い選択)キャンペーンが始まり、60以上のアメリカの専門機関が2014年末までに一覧を公表する動きとなった。
また、イギリスは国家戦略として、死亡の増加につながる不要な抗精神病薬の使用を低減してきたことを2013年のG8認知症サミットで報告している。
もちろんこうした医療費の無駄をなくす動きは日本でもわずかながら動き始めているが、国民皆保険制度とその基本となるフリーアクセスの保障と医師の応召義務があるため、非常に多い外来の受診数軽減のほうへと改善点の軸足が移されてきた。
医療費削減にはまず医療資源の効率的な役割分担と患者の振り分けだ。
平成28年4月から始まったのが、大病院を紹介状なしで初診を受ける場合は5,000円(歯科の場合は3,000円)以上、他の病院・診療所への紹介を受けたにもかかわらず再度同じ大病院を受診する場合は2,500円(歯科の場合は1,500円)以上の特別の料金を、診察料とは別に必ず支払う制度の導入もそのひとつだ。
しかし、初診負担額が数千円増えたところで患者の流れを決定的に変えるような効果を生み出してはない。
現状の国民皆保険制度を維持していくのであれば、今回の調査のよう医療費の対費用効果や無駄な医療の洗い出しや公表など、医療の提供側のしっかりとした評価や検証が必要だ。
(文=編集部)