技術の標準化と挑戦こそが重要
また、血液を採取してからDNAを回収するまでの時間が、どの程度解析結果に影響するのかも検討しなければならない。質の悪い研究者が、無茶苦茶な実験条件でごみの山を築き上げて、解析結果の解釈に混乱を引き起こす前に、技術の標準化が不可欠だ。
米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)には技術の標準化を専門にする研究機関があるが、日本にはない。また、「できるかどうかわからない場合に、何もしない」ことを選択する文化を捨て、「できるかどうかわからないなら、挑戦してみる」ことが必要だ。これができなければ、永遠にイノベーションなど生まれない。
私は、発見しにくいがんである卵巣がん、膵がん、胆管がんなどでも大腸がんと同じレベルで検出可能なら、その臨床的意義は高いと考える。とにかく、有用性を急いで評価する方向で研究を進めたい。
P53遺伝子(*3)の異常が検出されても、どこにがんがあるのかわからないと意味がないと、したり顔で偉そうにしている研究者がいるが、こんな人たちが日本の研究の足を引っ張っている。今日できないことが明日突然できるようになるのではない。地道な努力を続けることによって、日々、技術は改善され、実用化にたどり着くのだ。
卵巣がん・膵がん・胆管がん患者団体の方々、是非一緒にやりましょう。それ以外の患者団体の方々も、是非、できることがあれば一緒に行動を起こしましょう。
※『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2017/0327より転載
編集部注
*1 プレシジョン医療~より精密な対応を行う個別化医療
*2 リキッドバイオプシー(liquid biopsy)~主にがんの領域で、血液などの体液サンプルによって診断、治療効果などの予測を行う技術
*3 がん抑制遺伝子の中で最も有名な遺伝子の1つ