中村祐輔のシカゴ便り15

がん検診を大きく変えるリキッドバイオプシー~がん患者の半数が治癒可能になる時代③

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技術の標準化と挑戦こそが重要

 また、血液を採取してからDNAを回収するまでの時間が、どの程度解析結果に影響するのかも検討しなければならない。質の悪い研究者が、無茶苦茶な実験条件でごみの山を築き上げて、解析結果の解釈に混乱を引き起こす前に、技術の標準化が不可欠だ。

 米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)には技術の標準化を専門にする研究機関があるが、日本にはない。また、「できるかどうかわからない場合に、何もしない」ことを選択する文化を捨て、「できるかどうかわからないなら、挑戦してみる」ことが必要だ。これができなければ、永遠にイノベーションなど生まれない。

 私は、発見しにくいがんである卵巣がん、膵がん、胆管がんなどでも大腸がんと同じレベルで検出可能なら、その臨床的意義は高いと考える。とにかく、有用性を急いで評価する方向で研究を進めたい。

 P53遺伝子(*3)の異常が検出されても、どこにがんがあるのかわからないと意味がないと、したり顔で偉そうにしている研究者がいるが、こんな人たちが日本の研究の足を引っ張っている。今日できないことが明日突然できるようになるのではない。地道な努力を続けることによって、日々、技術は改善され、実用化にたどり着くのだ。

 卵巣がん・膵がん・胆管がん患者団体の方々、是非一緒にやりましょう。それ以外の患者団体の方々も、是非、できることがあれば一緒に行動を起こしましょう。

※『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2017/0327より転載

編集部注
*1 プレシジョン医療~より精密な対応を行う個別化医療
*2 リキッドバイオプシー(liquid biopsy)~主にがんの領域で、血液などの体液サンプルによって診断、治療効果などの予測を行う技術
*3 がん抑制遺伝子の中で最も有名な遺伝子の1つ

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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