不眠の解決には<上流>の原因を探れ!
――睡眠薬を飲んでも眠れないケースもありますか?
不眠の原因が、単純に脳の回路の問題だけなら、服薬によって功を奏すでしょう。しかし、仕事のストレスや家庭の問題などが根底にある場合、そちらを解決しなければ、薬によって脳の回路だけに働きかけても、不眠が解消されないケースは多いですね。
眠剤を用いるのは容易ですが、服薬以外の対処が必要な人にも投与している現状があり、それが薬剤頻用や多剤大量処方の問題につながっているのかもしれません。
――医療機関では、仕事や家庭の悩みを解決することはできませんが……。
もちろん。ここで大切なことは、不眠と悩みのどちちが<上流にある>のかという点です。
たとえば、借金の悩みなら医師よりも先に弁護士に相談すべきかもしれません。過剰な長時間労働が背景にあって健康的な生活が送ることができていなければ、労働環境の改善が先決です。
不眠の原因を探り、<上流>にある障りを解決することが重要です。
一昔前は、徹夜仕事や寝てない自慢が武勇伝のように語られることがありました。深夜まで残業することが生産的なのか? 人らしい生活なのか? まさに今、政府が掲げる「働き方の改革」が問われています。
(取材・文=里中高志/精神保健福祉士、フリージャーナリスト)
高橋正也(たかはし・まさや)
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 産業疫学研究グループ部長。1990年、東京学芸大学教育学部卒業。医学博士(群馬大学)。労働安全衛生総合研究所で仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事する。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。共著に『睡眠マネジメント─産業衛生・疾病との係わりから最新改善対策まで』(エヌティーエス)がある。