FDAが人工膵臓の携帯型デバイスを承認(shutterstock.com)
Ⅰ型糖尿病は、別名「小児糖尿病」と呼ばれる。子供のときに発症するのが特徴で、膵臓でつくられるインスリンが分泌されなくなってしまう病気だ。
自己免疫疾患のひとつであり、体内にあるリンバ球がインスリンをつくるランゲルハンス細胞を攻撃してしまう。
一般的に知られている糖尿病はⅡ型糖尿病だ。運動不足や食事の不摂生で発症する生活習慣病であり、主に中高年で発病する。同じ糖尿病でもⅠ型糖尿病とはまったく違うメカニズムで生じている。
適切なインスリンを自動的に投与する「人工膵臓」の実用化は夢の技術
Ⅰ型糖尿病は、生涯にわたってインスリンの投与が必要になる。インスリンをつくる細胞が機能回復することはずっと期待できないからだ。
これまで患者は、専門医の指導のもとで、体内に自分でインスリン注射をして、症状を抑えてきた。生命を守るためとはいえ、自己注射は大変な労力を伴う。特に、患者本人が子供であれば、親がその注射をしなければならない。
なかでも病院との連絡ができなくなる夜間は、危険な時間帯とされている。インスリンの投与量が適切でないときは、症状が抑えることができず悪化することがあるからだ。最悪の場合、死亡する危険性があるので、異常があれば救急車を呼ぶことになってしまう。
これはⅠ型糖尿病の患者、家族、そして治療する医師にとっても悩ましい問題だった。適切なインスリンを自動的に人体に投与する「人工膵臓」の実用化は、当事者、そして治療チームにとって夢の技術として待ち望まれていた。
その「夢の技術=人工膵臓」は世界中での研究が進められ、約20年の歳月をかけて、最近になってようやく実用化が見えてきた。