夜勤者は寿命を10年以上縮めるとの調査も
これまでにも夜勤やシフトワーカーの健康リスクにはさまざまな調査がある。フランス政府の委託でヴィスナール教授が2万人の交代勤務労働者を対象に調査した結果はよく知られている。それによると夜勤者は寿命を10年以上縮めるとしている。夜勤が長くなればなるほどイライラ、意気消沈、不眠、胃病などの症状が現れ次第に健康を害し、寿命を縮めるという。
基本的に人間は、昼間は起きて活動し、夜は眠る「昼行性(ちゅうこうせい)」の動物だ。昼間に浴びる光が体内時計のリズムを保つ役割を果たし、夜になれば眠くなり、朝が来れば目が覚める。夜勤は、その体内時計に逆らっているのでつらいのだ。
交代勤務をするシフトワーカーは、夜勤のつらさに加えて、夜勤から日勤へ、日勤から夜勤へと切り替える際の時差ボケが加わる。それによって身体は、どのようなダメージを受けのは更なる調査が必要だろう。
今回の研究でも、Minguez-Alarcon氏は、身体の概日リズムが乱れることがその一因である可能性を指摘し、交代勤務は流産、早産など、数々のリスクとの関連が示されていると話す。しかし、夜勤が卵子の質に影響する理由を解明するにはさらに研究を重ねる必要がある。また、力仕事の影響については明確な説明はできないという。同氏らはさらに、自然妊娠を試みる女性にもこの知見が当てはまるのかは不明だと指摘している。
Grifo氏は、「統計学的研究から個人の結果を予測することはできない」と強調し、不妊治療中の女性が重労働を避けるべきかどうかについては、明確なエビデンスがないと述べている。治療中は運動を止めるよう指示する医師もおり、また排卵誘発剤の副作用のために体を動かす気にならない女性もいる。
Grifo氏自身はストレス解消のためにも適度な運動を勧めているという。しかし、不妊治療の結果をコントロールすることは「不可能」であり、「成功しなくても自分を責めないでほしい」と、同氏は述べている。
夜勤やシフトワーク、力仕事などが妊孕性にどれほど影響するのかの明確なエビデンスはないものの、夜勤やシフトワーカーの健康リスクについてはいくつかの調査がその可能性を指摘している。
仮に不妊治療中や妊活中なのであればその労働環境を考慮してもいいかもしれない。
(文=編集部)