本人が発達障害と自覚する!家族や友人が理解し、受け入れ、サポートする!
このような発達障害の治療は、どのように試みられているのだろう?
発達障害の治療は、気づき、受け入れる、適切な治療を受け、周囲も適切な支援やサポートを行うことに尽きる。そのために、主として心理教育と環境調整療法、薬物療法、自助グループへの参加などが実践されている。
心理教育と環境調整療法/発達障害は、性格や家庭環境ではなく、脳や肉体的な機能不全や精神的なハンディに起因する。したがって、臨床心理士、医師による適切なカウンセリングや薬物治療による心理教育と環境調整療法が必要だ。
問題行動の原因を探る精神分析、無意識に行われる行動パターンを読み取る心理療法、人と触れあうための訓練を行う対人関係療法、話し方を練習するコミュニケーション訓練法、人間関係の構築法を学ぶソーシャル・スキル・トレーニングなどの行動療法などがある。意識が変われば、適切な治療を肯定的に考えるように行動変容が起きる。
薬物療法/薬物療法は、脳の機能を回復させるので、特に注意欠陥・多動性障害 (ADHD)やアスペルガー症候群に効果的だ。うつ病に処方されるSSRI(選択的セトロニン再取り込み阻害薬)、てんかんや躁うつ病の治療にも有効なバルプロ酸、自閉症や知的障害者の治療に用いられる抗精神病薬などがある。ただ、その効果についてはさまざまな見解や議論がある。
自助グループへの参加/発達障害の人は、自己評価が低く、地域や職場で孤立しがちのため、自助グループに参加し、同じ経験や苦痛を味わった仲間と話し合えば、不安が取り除かれ、安心感を与えることができる。
たとえば、社会認知度を広め、生活支援に寄与している「大人のADD&ADHDの会」(SOAA)、ADHDの人とその家族や教師などを応援する「えじそんくらぶ」、発達障害者とその家族を支援する「アスペ・エルデの会」などが活動している。
しかし、家族のサポートこそが、発達障害の治療に最も有効かもしれない。周りにいる家族や友人が発達障害を理解し、受け入れ、親身にサポートする。夫婦なら、じっくり話し合い、理解を深め合うことだ。
その他、日常生活でできる改善もある。たとえば、優先順位の高いものから片付けるために、その日、週、月ごとにやるべきことの一覧表(TO DOリスト)を作成し、やり遂げる。
繰り返せば、物事を順序立てて考える習慣がつき、ミスが減る。この視覚的構造化は、発達障害の治療に有効だ。また、情緒を安定させ、パニックを予防するために、自分だけの時間と場所を作る工夫も大切だろう。
さまざまな考察を進めてきたが、最も重要な点は、何か?それは、発達障害をもつ自分が発達障害と自覚する、周囲がフォローする、自分は愛され大切な存在だと信じる自己肯定感ではないだろうか。発達障害は障害ではなく、個性なのだ。
発達障害(原因)から人間の成長(結果)を見るのではなく、人間の成長(結果)から発達障害(原因)を見る視点が必要だ。人間は成長するために生きているからだ。人間の成長のキャパシティは計り知れなく大きい。
(文=編集部)