国内では転換期を迎えている置き薬事業
日本の置き薬は、国民皆保険制度が整うまでに国民の健康に大きく貢献したと言える。最も普及していたころに、近畿地方の約80%の家庭に置き薬があったとの報告もあるほどだ。
しかし、ここにきて置き薬を展開する企業は、コスト増、後継者の不足、経営基盤の脆弱さなどの問題を抱え、経営の近代化、事業の適正化などに取り組まざるを得ない<曲がり角>の時代に来ている。
国内市場は人口減少などで縮小傾向にある。このため、最近は風邪薬・消毒薬・頭痛薬・下痢止めなど繁用医薬品を中心としたラインナップに加え、健康食品やサプリメント、ドリンク剤、ミネラルウオーター、さらには防災食まで加えている場合もある。
一方では、解約をめぐるトラブルの多発や置き薬自体を<古臭い>とする声もあり、受難の時代に入っている。
日本の置き薬システムが世界に普及している!?
実は日本の置き薬システムを海外の医療支援に生かそうとしている事例はほかにもある。日本財団では2004年にモンゴルでスタート。主に遊牧民の居住地域を対象にして、漢方薬など伝統医療薬を納めた薬箱を配置した。
この成果を2007年8月にモンゴルで開催された伝統医学国際会議(WHO・日本財団共催)で紹介したところ、参加各国から大きな反響があり、タイ、ミャンマー、ベトナムでの実施が決定したのだ。
タイとミャンマーでの事業開始は2009年。ミャンマーでは2011年までの3年間で全14州において1州あたり500村、合計7000個を配布を実施しており、その後も事業は継続となっている。
ミャンマーの場合は、薬箱は1村に1箱の配置。村内で選ばれた薬箱の管理者から必要な分だけ購入できるような仕組みだ。薬箱の中身は、7種類の伝統医薬品(咳止め薬、解熱剤2種、強心薬、目の薬、下痢止め、鎮痛軟膏)のほかに、体温計、ガーゼ、包帯、消毒用アルコール、薬草系アルコール、絆創膏などが入っている。