事件後にも受け続ける「セカンドレイプ」
この3カ月だけでも、東大、慶應大、近畿大、千葉大へと飛び火した強制わいせつ事件や集団強姦事件。<何をしても許される>、そんな自分本位な性欲と非道な暴力が招いた悲痛な事件ばかり。その犯罪性は甚大だ。
そして、さらに重大な問題がある。被害者が事件後に、心理的・社会的な傷害やストレスを受け続ける「性的二次被害」、いわゆる「セカンドレイプ」だ。
たとえば、産婦人科医や警察官が被害者に対して「男を誘惑したり挑発したのではないか」と中傷したり、「スキがあったのではないか」と責任を問うことがある。マスコミ報道によって、世間から好奇の目に晒されることも多い。法廷での弁護側が行う主張や尋問が、被害者を傷つけることもある……。
このようなセカンドレイプは、被害者が受けた身体的ダメージに加えて、人間不信、無力感、性暴力への恐怖心などの心理的・社会的ダメージをますます強める。申告したことを後悔し、早く忘れるために泣き寝入りする被害者も少なくない。
セカンドレイプは予防できないのか?
社会的なコンセンサスの道は険しいが、性犯罪や性暴力事件に関わる誤った性意識や、レイプを容認する偏ったレイプ観を地道に正していくほかない。
しかし、悲しいかな、世間や匿名のネット民の目は冷たく、被害者の心を無残に逆撫でる場合が少なくない。一例にすぎないが、まとめサイトやSNSなどで取り沙汰されている「金玉潰し祭り」のような喧騒はどうだろう?
これは、「痴漢される女にも原因はある」と主張する男性に対して、女性が「じゃあ、電車で大股おっぴろげて寝ているオヤジは金玉潰されても原因はお前にあるよな?」といった、男女を入れ替えたネット上での思考実験だ。Twitterでは、ハッシュタグがつけられ瞬く間に拡散されていった。
だが、興味本位の画像や、男性の性暴力へのカウンターアタック(反撃)などの独断的なコメントを見る限り、性犯罪の被害を受けた人たちへの配慮はまったく感じられない。
蛇足だが、<金玉潰し>は拷問やリンチに悪用される手段だ。睾丸は強固な膜で守られているが、限界を超える加圧が起き、白膜が裂けると最悪の場合、睾丸を摘出し、適切な止血措置を行わないと死に至る場合もある。