連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第20回

ニセ薬でも「腰痛」は改善する! 驚きの 「プラセボ効果」の正体は<信頼関係>?

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
261613799.jpg

何より大事なのは医師と患者との信頼関係(shutterstock.com)

 先日、面白い論文が発表され、いくつかのメディアでもすでに話題になっているものがある。それは「偽物の薬だと患者がわかってそれを飲んでも、実際に腰痛が改善した」という報告だ。

 この研究結果は『Pain』(10月13日号)に掲載されたもの。この実験を簡単に説明すると、慢性的に腰痛を持っている97人を2つのグループにわけ、一方のグループはいつも通りの治療を続け、もう一方のグループには「プラセボ効果」に関する説明を行い、プラセボ効果を理解してもらったあとで「この薬は偽物です」とラベルの貼られている薬を処方した。

 3週間後に「痛み」を調べたところ、偽物の薬だとわかっていて飲んだグループでも、最大で30%もの疼痛レベルの改善が認められたというものだ。

 ちなみにプラセボ効果とは、「本来は薬として効かないもの、つまり偽物の薬、を処方したにもかかわらず効果が現れる」こと。

 実際にプラセボ効果は薬だけではなく、さまざまな治療において効果があることがわかっている。だが、そのメカニズムはまだ解明されていない。

 研究著者の1人である米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)のTed Kaptchuk氏によると、プラセボ効果は「有効な薬を飲んでいる」という患者の意識的な期待によって誘発されるものとは限らないことが示されたという。

プラセボ効果は医師と患者との信頼関係か

 この研究によってプラセボ効果の新しい真実がまたひとつわかったわけだが、ここで重要なことは、この効果が「痛みに対して」ということである。

 この論文にも述べられているが、プラセボ効果により、実際の「がん」の大きさを小さくしたり、血管の閉塞を直したりすることはできない。

 しかしながら、「痛みの感じ方」は改善できる。それは「痛み」というものが主観的なものであり、人によって感じ方が違ったり、また気持ちや精神状態でも容易に変化するものだからである。

 なぜこのような効果が起こったのか? その推測として研究の代表者は「医師と患者との信頼関係があったからだろう」と述べている。医師との信頼関係が強ければ、プラセボ効果があり、弱ければ、おそらく効果は薄いだろう、と。

 医師との信頼関係によって、「この医師が処方してくれた治療法だから大丈夫」という気持ちが疼痛レベルを改善させる手助けとなったのだろう。

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

三木貴弘の記事一覧

三木貴弘
若いうちのEDは動脈硬化注意のサイン~不妊の原因の半分は男性である!
インタビュー「目指せフサフサピンピン!男性専門クリニック」第3回・メンズヘルスクリニック東京・小林一広院長

テストステロン(男性ホルモン)の存在に着眼し、AGA(男性型脱毛症)治療、男性皮膚治療、男性更年期、前立腺がんのサポート、男性不妊など、男性の外見や内面の健康に関わる様々な治療を独自の視点から行うメンズヘルスクリニック東京(東京・丸ノ内)の小林一広院長。第3回目は「男性妊活・男性力」について。
第1回AGA治療はコスパが重要~薄毛の悩みを抱える人は1200万人
第2回男性6人に1人が「隠れ更年期障害」! 更年期障害は女性だけの病気じゃない!!

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

里中高志

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジ…

横山隆