連載「眼病平癒のエビデンス」第16回

「老眼」の手術は必要か? どの手術も「治す」のではなく「軽減」が目的だという認識を

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老眼手術は「治す」のでじはなく「軽減」が目的(shutterstock.com)

 「老眼が治る」と言う話や広告を見たことがあると思います。「治る」とは、風邪や胃潰瘍が治るなど、病気に対して使う言葉です。しかし老眼は病気ではなく、しわや白髪のように加齢変化です。

 白髪を染めれば一時的に黒くなりますが、色が落ちれば白髪が見えてきます。老眼も同じで、どんな治療を受けても、あるいはどんな道具を用いても、老眼は治りません。「軽減する」、あるいは「困らなくなる」程度だと思っていないと、期待外れになることでしょう。

 最近は「アンチエイジング」と言って、少しでも若い状態を保つことや若返ることを目的とした様々な施術やサプリメントの広告を目にすることがあります。「老眼を治す」と言う治療も一種のアンチエイジングと言えると思われます。

「老眼」のメカニズムは?

 前回の連載(若年層に急増する「スマホ老眼」とは? ブルーライトの画面を見続ける「過矯正」と共通点も)でも記載したように、目の中のレンズである「水晶体」が、近くを見る時には厚くなり、遠くを見る時には薄くなり、見る対象物にピントを合わせます。

 この水晶体は、加齢変化により弾力性を失い、厚くなることができにくくなります。それによって近くの物が見えなくなるのが「老眼」です。早い人で30代後半から始まり、60代くらいまで徐々に進行します。何らかの対策を取らないと、眼精疲労や頭痛、肩こりなどの原因となります。

 若い頃から近視の人は、メガネをかけて、遠くの物や近くの物を見ています。視力が良い人は、メガネをしなくても、遠くの物も近くの物も見えています。

 しかし、ある年齢になると、近視の人は、メガネをかけると遠くの物は見えますが、近くの物が見づらくなり、メガネを外して近くの物を見ます。一方、視力が良い人は、メガネをしなくても遠くの物は見えますが、近くの物は見づらくなります。つまり、若い時と同じ方法では、遠くの物か近くの物か、どちらかしか見えないわけです。

手術による老眼対策

 今回はインターネットなどで見かける「手術による老眼対策」について解説します。しかし、若い時と同じような見え方や目の状態に戻す手術ではないので、なにがしかの我慢や犠牲は必要であることを知っておいてください。

 また、今回の連載を読んでいただいている方々の中にも、視力の悪い方(近視が強い方)や視力が良い方がおられると思います。しかし、老眼を感じ始めた時に、「強い近視」の人、「軽い近視・遠視」の人、「強い遠視」の人では、対応が異なります。どの様にして遠くの物や近くの物を見ているか、また、メガネをかけているかいないかでも、対策が異なります。そのため、今回の話も、すべての方にあてはまる訳ではないので、自分がどの手術の適応があるかは担当医に確認してください。

 まず、老眼の手術を理解する上で、ぜひ知って欲しい言葉が「モノビジョン」と「多焦点」です。

「モノビジョン」と「多焦点」

 「モノビジョン」とは、一方の目では遠くが見えて、もう一方の目は近くが見えて、両目で見ると遠くも近くも見える、いわゆる「がちゃ目」の状態です。若い頃は、視力が悪い目だけ度の入ったメガネをかけている人もいます。しかし、老眼の年齢になるとメガネがなくても遠くも近くも見えるので、意外と便利だと感じる方もいるようです。
 
 「多焦点」を理解するためには、1枚のレンズで遠くも近くも見えるようにした「遠近両用メガネ」を思い浮かべてください。レンズの上部で遠くが、下部で近くが見えるように、上から下へ多数の焦点を設けています。これが「多焦点レンズ」になります。若い人がかけている近視矯正のメガネは、遠くが見えるようにした単焦点のレンズです。若い時には、単焦点レンズのメガネをかけても、調整力が保たれているので近くも見えるのです。

高橋現一郎(たかはし・げんいちろう)

東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授。1986年、東京慈恵会医科大学卒業。98年、東京慈恵会医科大学眼科学教室講師、2002年、Discoveries in sight laboratory, Devers eye institute(米国)留学、2006年、東京慈恵会医科大学附属青戸病院眼科診療部長、東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授、2012年より東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科診療部長。日本眼科学会専門医・指導医、東京緑内障セミナー幹事、国際視野学会会員。厚労省「重篤副作用疾患別対応マニュアル作成委員会」委員、日本眼科手術学会理事、日本緑内障学会評議員、日本神経眼科学会評議員などを歴任。

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