糖尿病患者を救う「携帯型の人工膵臓」! インスリンの自動投与がついに実現

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FDAが「人工膵臓の携帯型デバイス」を世界初の承認

 このほどアメリカ食品医薬品局(FDA)が、「人工膵臓の携帯型デバイス」を世界で初めて承認した。アイルランドのメドトロニック社が開発した「MiniMed670G」という商品だ。

 大きさはiPhoneと同じくらいで、小型で軽量である。モニターした血糖値に応じて、インスリンの投与量を自動調整し、病状を抑えることができる。

 Ⅰ型糖尿病患者123人を対象にした3ヶ月の臨床試験の結果、良好なデータが得られ、来年の2017年春には臨床で使えるようになる予定だ。

 しかし、まだ課題は残っている。その一つが、すべての操作が自動化されていないことだ。患者は、自分が摂取する炭水化物のカロリーを計算し、その情報をデバイスにインプットしなければならない。

 FDAは、このデバイスの使用を14歳以上の患者に限定している。さらに低年齢の患者と家族の悩みが解消されるには、まだ多くの技術革新が必要になる。

 今回はアイルランドの企業の商品だが、アメリカのメーカーもすでに動いている。バージニア大学とハーバード大学の研究チームは、国立衛生研究所(NIH)から1270万ドルの資金提供を受けて、臨床試験をスタート。

 バージニア大学は240人、ハーバード大学は180人のⅠ型糖尿病患者を対象に、半年間にわたって臨床データを取る。

入院治療のための「ベッドサイド型の人工膵臓」

 患者を入院治療する医療機関では、「ベッドサイド型の人工膵臓」の開発競争が始まっている。携帯型の人工膵臓とは異なり、より精密なインスリンのコントロールができることを目的としている。

 高知大学医学部外科学講座による論文「人工膵臓の現状と課題」(「人工臓器」44巻3号2015年)によると、日本のベッドサイド型人工膵臓「 STG-55」は、世界で唯一のクローズドループ式人工膵臓の実用化に成功。その精度も高い。

 対象患者427例の血糖値管理を行ったところ、低血糖発作は0%、約90%の達成率で目標となる血糖値管理が可能である。

 医療の市場という観点でも人工膵臓の動きは注目されている。Ⅰ型糖尿病の患者は少ない。日本国内で年間の発症率は10万人あたり1〜2人である。希少難病のひとつと言ってよいだろう。

 先述のように、最も多い糖尿病患者は、生活習慣病由来のⅡ型糖尿病である。医療機関もメーカーもⅠ型糖尿病を対象にした人工膵臓の実用化に成功したあとに目指しているのは、Ⅱ型糖尿病患者に人工膵臓を使ってもらうことだ。

膵臓の次は何が人工化されるか?

 より多くの糖尿病患者を救うために、世界中で開発競争が進み、新しい技術革新と、商品がでることが望ましい。

 理想の人工膵臓は、糖尿病患者が携帯型デバイスを装着することで、健康人となんら変わることがない生活ができることである。そして、専門の治療機関である病院が、携帯デバイスと連動する大型の人工膵臓でより精密な治療を行い、治療成果をあげることだろう。

 これはあたかも、大型コンピューターと携帯端末がつながって生活の質を上げてきた、私たちの生活感覚とつながっている、非常にイメージしやすい未来像だ。

 今回の携帯型人工膵臓の実用化は、大きなインパクトを社会にもたらすだろう。健康管理のために従来の医療技術に加えて、携帯型の「人工臓器」が付け加えられるのだから。

 では、人工膵臓の次は、何が人工化されることになるのだろうか?
(文=編集部)

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