これらの民間療法(代替医療)に科学的根拠は?
バルカン諸国では、新鮮な豆の葉を寝室のあちらこちらに置いておけば、ナンキン虫駆除に役立つという民間療法がある。これにはある程度の科学的根拠がある。インゲン豆の葉についている目に見えないほどの単繊維が、ナンキン虫駆除に役立っているようだ。現在、この単繊維を人工的に作ろうという研究が進められている。
ロシアでは、牛乳を腐らせないようにするために、その中にカエルを入れておくのがよいと言われている。これにも科学的根拠はあるようだ。両生類は抗菌性分泌物で肌が覆われている。そのおかげで、湿地で繁殖している病原体から身を守ることができる。カエルを牛乳に入れておくと、この分泌物によって腐らないのかもしれない。
古代エジプト、中国、インド、アフリカでは、潰瘍、火傷、切断手術などの治療にハチミツを使ったと言われている。実は今日でも、医師がハチミツを治療に使うこともある。子どもの咳が止まらなければ、寝る50分前にハチミツを与えると少しおさまる。また、傷口にハチミツをつけることもある。
アメリカでは、百日咳の治療にはニンニクがよいと言われている。科学的に言えば、ニンニクは百日咳の治療には役立たない。しかしニンニクは、抗ウィルス、抗真菌性、抗菌性で、病原菌に対抗することができる。
蚊に刺されないようにするためには、カリカルパ・アメリカーナの葉を押しつぶし、その液を身体に塗ればよいと言われている。これは米国農務省のお墨付きだ。カリカルパ・アメリカーナには、蚊が嫌う化合物があるのだ。
たまねぎは、腫物、じんましん、ひきつけなどの治療に役立つと言われている。それには科学的根拠はないが、他の効用がある。たまねぎは、ビタミンC、硫黄化合物、フラボノイド類、植生化学物質の宝庫でパーキンソン病、循環器系疾患、脳卒中などのリスクを下げる効果がある。
ショウガは「百薬の長」として、風邪、腹痛、生理痛など万病に効くと言われている。実際、吐き気を緩和したり、妊娠中の嘔吐を安全かつ効果的に対処したりするものとして重宝されている。ただし、ショウガは「乗り物酔い」には効かない。
補完的健康アプローチの「心身療法」では、WHOが1996年に鍼灸における適応疾患を起草したり、NIHが1997年に鍼治療の合意形成声明書が発表されたりと、エビデンスに基づいた研究が進んでいる。
しかし、「天然物」に関しては、まだ十分に研究が進んでいないのが実情だ。天然物に関しても、今後、研究の進展が期待される。