HIV感染は「死の病」ではないなったが……(shutterstock.com)
先進国でほぼ唯一といえるほど、「HIV(エイズウイルス)」感染者の増加が続いている日本で、新たな問題が浮上している。
治療法が確立されたことで「死の病」ではなくなり、HIV患者の高齢化が進むなか、医療機関や福祉施設の「受け入れ拒否」が少なくないというのだ。
40カ所の透析機関に「HIVは来ないで」と断られた
2014年に大きく報じられたのが、高知県内の歯科診療所がHIV陽性者の治療を拒否したケースだ。
県内に住む感染者が前年10月、かかりつけだった歯科診療所でHIV陽性であることを伝えたところ、歯科医師は「治療していることがほかに知られる可能性があるので」と、以後の治療を拒否したという。
その後、この患者は高知大学医学部付属病院で治療を受けたが、県内のエイズ治療の中核を担う同病院では「診療拒否はあってはならない」として、歯科医師らに対応を呼び掛けた。
また先月には、都内に住む60代のHIV感染者の事例が報じられた。
この男性は、持病の糖尿病やHIV治療の影響で腎臓の機能が悪化し、5年ほど前から週3回の透析を受けていた。転居したために新たな受け入れ先を探したが、約40の医療機関から断られたという。
このような例は、医療従事者が血液に触れる可能性がある人工透析や歯科診療ばかりではない。
長期入院が前提の療養型病床や介護施設は、HIV陽性者の受け入れに後ろ向きなのが現状だ。訪問看護の受け入れは増えたが、往診医や急変時に対応してくれる後方支援病院がなかなか見つからないという。