連載「快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病」第8回(最終回)

ハリウッドセレブのセックス依存症から学ぶ~回復への「12のステップ」

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パトリック・カーンズ『セックス依存症 その理解と回復・援助(Out of the Shadows)』

 先日、俳優のチャーリー・シーンさんが、HIV感染を公表した。以前から自宅に娼婦を何人も呼んで乱交パーティーを行い、性依存症ともささやかれていた。噂では5000人以上と関係をもったともいわれ、感染が判明してからも多くの女性と性交を重ねたという告白に衝撃が走っている。

 単にセックスが楽しいというだけではなく、セックスをしないではいられない、セックスなしには生活が送れないほど渇望するようになると、それは依存症だ。残念なことだが、シーンさんの場合、HIV感染という転機があってもセックス依存症から回復することができなかった。

 2004年に中央法規出版から邦訳が刊行された『セックス依存症 その理解と回復・援助』という本がある。原題は「Out of the Shadows」。巻末に書かれている情報によると、著者のパトリック・カーンズはアリゾナ州にある嗜癖専門の治療施設の性生涯部門担当の臨床ディレクターである。

 そのような現場に従事する専門家によって書かれた本書は、具体的な事例を多く紹介しており、アメリカでは広く読まれた。日本で出された翻訳版は、残念ながら現在は書店での入手は難しくなっているが、「セックス依存症とは何か」を知る上で重要な文献だと言えるだろう。

 この本の最後のほうに、嗜癖者(依存症者と言い換えてもいい)がしばしば持ってしまう、誤った4つの中核信念というものが書かれている。次のようなものだ。

①私は元来、邪悪で、価値のない人間だ。
②あるがままの私を誰も愛してくれない。
③もし人に頼る必要があるなら、私の欲求は決して満たされることがない。
④セックスは最も大切な私の欲求である。あるいは、セックスは愛情の一番大切な印である。

 この誤った信念は、「12のステップ」という回復のための手段を経ることで、次のように変えることができるとカーンズ氏は書く。

①私は誇りに値する価値ある人間だ。
②あるがままの私を知る人から私は愛され、受け入れられている。
③自分の必要としているものを知らせると、私の欲求は他の人によって満たしてもらえる。
④セックスは私の欲求や他の人への心遣いの一つの表現にすぎない。

セックス依存症に変化をもたらす「12のステップ」

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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