連載「死の真実が“生”を処方する」第30回

「ダニ」で命を落とすな! つつが虫病、ライム病、日本紅斑熱、重症熱性血小板症候群(SFTS)……

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ダニがもたらす病気がなくなることはない!(shutterstock.com)

 6月、7月、8月の平均湿度は、東京都で70%を超えます。この時期は、まさにカビ・ダニの好む環境。ダニが人間の健康に病気をもたらす媒介となるケースは少なくありません。

 ダニは世界中で数多く存在し、身近な所に必ずと言っていいほど。台所には小麦粉や砂糖などを食べて生きているコナダニ、屋内には、挨に含まれる栄養物(ハウスダスト)を食べているものもいます。

 ダニはとても小さいので、普段は気がつくことはありません。アレルギーの原因のひとつにハウスダストが挙げられますが、挨の中にいるダニこそがアレルギーを引き起こす正体とも考えられています。

 屋外には、落ち葉や土の中に含まれる菌類を食べるものや、人を含めた動物にくっつき、その体液を吸って生きるものもいます。特に、人の血液を吸って大きくなるマダニや皮膚の中に入り込みトンネルを作って生活するヒゼンダニが知られています。

刺し口のようなものが皮膚にあったら……

 ダニの中に「ツツガムシ」という種類があります。これは主に野ネズミに寄生して吸血しています。しかし、まれに人を刺して、動物が持っていた病原体を人の体内に入れ、発熱や体の発疹をもたらすことがあります。

 これを「つつが虫病」と呼び、北海道を除く全国で年間約400人が発症しています。

 また、北海道を中心に発生する「ライム病」があります。これは高地に生息するマダニが媒介する病気で、発疹が出た後に神経麻痺が生じます。わが国では年間20人程度がかかっています。

 昨年、歌手のアヴリル・ラヴィーンさんがライム病による闘病生活を告白。「5カ月間ベッドで寝たきりで、息もできないくらいで、話すことも動くこともできなかった」と語るほど、深刻な症状だったようです。

 同様にマダニに刺されて手足の発疹や発熱を生じる「日本紅斑熱」は、西日本を中心に年間約150人が罹患しています。

 いずれも抗菌薬が有効です。早期に適切な治療が施されれば、重篤なことにはなりません。また、先に紹介したヒゼンダニは、人の皮膚に寄生します。

 指の聞や陰嚢などの柔らかい部分を中心に発疹が出ますが、これを疥癬と呼びます。時にはトンネルがほられ、ダニが住み着きます(疥癬トンネルと呼ばれます)。

 人と人の皮膚が接触することで容易に感染するので、かつては介護施設において集団発生することもありました。現在でも年間約10万人程度の患者がいるとも言われています。

 体に発疹や発熱が生じ、しかも虫の刺し口のようなものが皮膚に見られたら、すぐに医師の診察を受けてください。ダニによってもたらされた病気かもしれません。

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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