ホルモン補充療法は中止の時期を医師とよく話し合う
ホルモン補充療法(Hormone replacement therapy=HRT)はエストロゲン欠落症状を緩和するには非常に有用な治療法だが、HRTに期待する内容は人によって様々で、それによって治療の中止時期が異なってくることがある。
大多数の人は更年期障害の緩和を目的にHRTを開始するため、不快症状が緩和すれば薬の投与量を減らしていく。しかし、人によっては症状が消失した後も、骨粗鬆症や動脈硬化などの“予防”をはじめ、“アンチエイジング”などを期待して、治療の継続を望むことがある。
後者の場合、医師がHRTの減量や中止をもちかけると強い抵抗を示すことが多い。その場合には、患者が何を目的として治療を開始し、どのような効果をHRTに期待しているのかをもう一度よく整理して、治療継続のリスクとベネフィットを説明したうえで、再度、話し合いの場をもつようにしている。
HRTは長期的な展望に立って行ない、目先は更年期障害の治療でも、長期的には10年先、20年先の健康管理も含んでいることが望ましい。しかし、HRTの長期投与にはリスクもあるため、それが将来の生活の質(QOL)を脅かす要因となっては元も子もないからである。
医師は患者の希望に耳を傾け、訴えの内容を整理して、情報を提供し、適切なアドバイスを行なうが、最終的に人生のどの段階で、どのような治療法を選び取るかは、本人が決める問題である。人生という長い航路の舵をとる主人公は、あくまでも自分自身なのだ。納得いくまで話を聞き、積極的に診療に参加して欲しい。
更年期に差しかかったら、全身を総合的に診てもらえるホームドクターをもち、具合が悪くても、悪くなくても、定期的に健康診断を受けるようにするといいだろう。それが早期予防と早期治療への近道となり、必ずや将来の生活の質を高めることにつながっていくからだ。
更年期障害の治療には家族の理解と協力が不可欠なこともある。私は必要とあればご家族を呼んで症状を説明し、治療に対して協力を求めることも厭わない。人生の伴走者として、是非、専門家である医師を味方につけて欲しい。困ったことがあったら一人で悩まないで、気軽に相談に来ていただきたいと思う。(了)