全摘と同時に再建という選択肢も
生稲晃子さんも、著書のなかでこう述べている。
〈全摘術か温存術かで悩み、選択をするときに、再建まで視野に入れているのであれば、無理な温存術でなくとも、全摘をして後に再建をしたほうがよいという考え方があるようだ〉
乳がん治療や乳房再建の術式は日々進歩しており、選択肢は一昔前とは比べものにならないほど増えている。
同書の後半では、最新の治療技術について、生稲さんの主治医であるがん研有明病院の乳腺外科・宮城由美医師、放射線治療部・小口正彦医師、形成外科・前田拓磨医師がレクチャーしている。
生稲さんの場合は、これまでは難しいとされていた、放射線治療を受けてからの乳房再建を行っており、乳がん治療の進歩を知る上でも興味深い。
小陰唇を用いた再建術も……
特に形成外科領域では、手術をしないほうの乳頭の下半分や小陰唇の一部を切り取って移植するなど、最新の乳輪・乳頭再建術を紹介。
生稲さんは「乳房再建はいまやアートの領域なのかもしれない」とコメント。この闘病記によって、乳がん治療の先端では「命を救う」から「美しく治す」という観点も重視されていることが分かる。
このような最新の治療技術を知ることは、まさかの乳がん宣告にも希望を捨てずに、努めて冷静に対処するための一助となるはずだ。
(文=編集部)