「制服」を愛する男たち~これが性的倒錯の“ボーダーライン”を超えた衝動

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なぜ男は制服フェチに走るのか?(shutterstock.com)

 「あなたは性倒錯者だ!」――。そう正面切って言われたら、ドキッとするかもしれない。

 ジェシー・ベリングの『性倒錯者 だれもが秘める愛の逸脱』(化学同人)を読み始めるや否や、「ひょっとしてオレも性倒錯者ではないか?」という疑念が沸々と湧いてくるから奇妙だ。

 本書に登場するのは、たとえば、エッフェル塔と恋に落ちる対物性愛の女性、イケメンのくしゃみに欲情する男性、ポルノ映画に出演する恋人同士の双子など、常軌を逸した性愛行為に耽る生々しい性倒錯者のエピソードばかりだ。

 色情狂、偏愛者、淫行者はいわずもがな、対物性愛、動物性愛、死体性愛から隙間性愛、階段性愛に至るまで、口にするのも憚られる性愛のあからさまな実態、生物学・心理学がメスを入れた性的逸脱や変態性欲の赤裸々な事実に、唖然とさせられる。

 翻って日本社会に巣食う性倒錯とは? 今回は、制服マニアや制服フェティシズムに絞り、その深層心理と病理に迫ってみよう。

制服に縛られたサディズム(加虐性欲)がエロティシズムを掻き立てる!?

 2015年12月、お笑いコンビ「キングオブコメディ」の高橋健一容疑者が東京都世田谷区内の都立高校に侵入、体育館の更衣室から脱衣直後の女子高生の制服を奪う窃盗事件が発覚し逮捕された。

 報道によれば、高橋容疑者は20年間も犯行を重ねていたため、自宅から大型ポリ袋約70袋、合計約600着の制服が押収された。

 高橋容疑者のような制服マニアは、どのような心理に動かされて犯行に及ぶのか? 制服フェティシズムに陥る深層心理は何か? 制服フェティシズムのヒミツに肉薄し、検証した労作がいくつかある。

 酒井順子さんの『制服概論』 (文春文庫) 、三田村蕗子さんの『なぜ日本人は制服が好きなのか』(祥伝社新書)、成実弘至さんの『コスプレする社会』(せりか書房)などだ。

 これらの筆者の結論は、分析手法はやや異なるものの、ほぼ一点に集約できる。

 女子高生ならセーラー服やブレザー、濃紺スカートに濃紺ソックス、黒のローファーなど、OLなら濃紺スカートに濃紺ベスト、リボンなどを強制的に着せられ、縛られられているので、制服フェティストのエロティシズムが刺激され、制服フェティシズムが起きるとしている点だ。

 つまり、彼女たちは制服を“強制的に着せられている”ため、制服は彼女たちを縛るアイコンになり、彼女たちは制服に縛られたアイコンになっている。

 すなわち、彼女たちは制服に縛られているので、身体的な自由を奪われているという妄想や精神的な苦痛を与えられているという空想が強く働く。

 そのため、制服フェティストはサディズム(加虐性欲)の快感を味わいながら、制服へのエロティシズムに浸る。これが制服フェティシズムの深層心理に他ならない。

 アメリカ精神医学会(APA)が定める『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版改定版(DSM-IV-TR)によれば、制服フェティシズムは性嗜好異常(パラフィリア)またはパラフィリア障害群に分類され、診断基準が明記されている。

 以下の2点を満たせば、精神疾患としての性嗜好異常(パラフィリア)と診断される。

①当人が自分の性的嗜好によって心的な葛藤や苦痛を持ち、健康な生活を送ることが困難であること。

②当人の人生における困難に加えて、その周囲の人々、交際相手や所属する地域社会などにおいて、他の人々の健全な生活に対し問題を引き起こし、社会的に受け入れがたい行動等を抑制できないこと。

 また、世界保健機関(WHO)が定める『疾病及び関連保健問題の国際統計分類ICD-10』の『第5章:精神と行動の障害』によれば、制服フェティシズムは、性嗜好の障害に分類され、F65.0 フェティシズムとF65.1 フェティシズム的服装倒錯症が定義されている。

 したがって、制服マニアの高橋容疑者は、性嗜好異常(パラフィリア)またはフェティシズム的服装倒錯症と診断されるかもしれない。

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