家族性大腸ポリポーシス(画像はモザイク加工のもの)
40代までに「100%がん化」する病気がある。「家族性大腸腺腫症」(familial adenomatous polyposis:FAP)だ。「家族性大腸ポリポーシス」「家族性腺腫性ポリポーシス」とも呼ばれる。
常染色体優性遺伝性の疾患で、大腸全域に無数(100個以上)の腺腫が発生し、40代までに「100%がん化」する。医療ドラマ『フラジャイル』第4話では、30代女性がこの病気であることが判明して……というエピソードが描かれた。
「ドラマ『フラジャイル』で考える患者の“知らない権利”~正確な病理診断が残酷な結果を伝えることも」
原因は、大腸がん発生の初期段階に関与するがん抑制遺伝子とされるAPC(adenoma polyposis coli)の異常だ。胃や小腸にも高頻度で腺腫(adenoma:良性腫瘍)を合併するが、胃体部のポリープは胃底腺ポリープ(非腫瘍性)の例が多い。
発症者を中心に家系図をつくり「無症状者」を早期発見することが肝要だが、逆に手術のタイミングの見立てがむずかしい。がんになる前に、良性ポリープのたくさんある大腸を予防的に切り取る「予防的全大腸切除手術」を行うと、生涯、下痢状態が避けられない。
手術はQOLの観点を考慮して、全結腸切除に直腸粘膜切除術を加えた「大腸粘膜全摘術」が実施される。がんが発生するのは粘膜からなので、直腸(がんが一番発生しやすい部位)は粘膜だけを切除するというわけだ。
この場合、肛門括約筋が残されるため、永久的な人工肛門(ストーマ)はつくられない(手術後一時的に人工肛門がつくられる)。