「クローン病」に侵された腸
クローン病は、口から肛門までのすべての消化管(全長約6m)に慢性肉芽腫性炎症を生じる“原因不明”の疾患だ。
厚生労働省は、クローン病を特定疾患に指定。とりわけ、終末回腸(回腸末端から盲腸にかけての回盲部)が好発部位だが、大腸に発生するクローン病も稀でない。「潰瘍性大腸炎」とともに「炎症性腸疾患」(IBD:Inflammatory bowel disease)に分類される。
発症は10代後半から20代の若年層に多く見られ、国内での罹患者数は4万人以上。およそ2:1で男性が多い。致死的でないうえに、簡単に治癒しない病気なので、患者の高齢化が進んでいる。
腸管の壁の全層にわたって炎症が生じる結果、腸管の狭窄や腸管同士の癒着・瘻孔(トンネルのようにつながること)が生じやすく、腸に穴が空いて緊急手術を要する場合も生じる。
掲載したのは、定型的なクローン病(終末回腸炎)の肉眼像である。回腸末端部に縦に走る潰瘍(縦走潰瘍)がみられ、病変が多発している。
クローン病は、潰瘍性大腸炎と違って病変が腸管の一部に限られるため、手術適応になる例が多い。