ネットでの売買の取締を(shutterstock.com)
2016年4月、北海道で44歳の男性パート従業員が、インターネットを利用して英国より2度にわたってメチオプロパミン6.2g(1万1300円相当)を国際郵便で羽田空港に輸入し、逮捕されたとの記事が地方紙に掲載された。
メチオプロパミンとは、覚醒剤メタンフェタミンの化学構造式の一部を変換させて製造された、いわゆるデザイナードラッグ(類似麻薬)である。近年、化学構造式を次々と変換させて摘発を免れの「イタチごっこ」を続けてきた危険ドラッグと、同じような性格の薬物である。
メタンフェタミンは、日本ではヒロポンという名称で知られている。医療機関ではうつ病などで患者の虚脱状態、昏睡、脱力感などの症状を改善させる目的で用いられている。しかし、あくまでも医療機関での使用が限定許可されている薬物であり、市中での販売は禁止されている。
ヒロポンとは「疲労をポンと取る」に掛けて名付けられたといわれている。第二次世界大戦中は、軍隊で兵士の疲労回復、戦意高揚などを目的として盛んに利用されていた。
しかし、副作用として、不安、興奮、頭痛、不眠、動悸などの症状が出現し、それによって多くの兵士が悩まされた。戦後になって劇薬指定され、さらに1951年に制定された覚醒剤取締法により禁止薬物に指定され、中毒患者は激減した。
メチオプロパミンもメタンフェタミンと同様な機序で、ほぼ同等の効果が得られる。2010年ごろよりイギリスで多数の不正使用例が報告され、依存症患者が爆発的に増加。主にインターネットを介しての売買が中心で、ホームページは魚や水草の専門ショップを装い、その実、研究用化学物質のページに誘導させるという、実に巧妙な手口で販売されていた。
当時、イギリスの行政・司法機関は規制に動いたが、わが国で展開されている危険ドラッグめぐる「いたちごっこ」と同じような経過をたどった。