>  > 認知症での多剤併用治療が症状を悪化させている!

その薬大丈夫? 認知症患者への向精神薬などの多剤併用がますます症状を悪化させている!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

療養空間のホメオスタシスを如何に維持するかが重要

 2013年に発表された『かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン』では、「BPSDに対する抗精神病薬の有効性に関する十分なエビデンスはない」「できるだけ使用しないように努めるべきである」「多剤使用をできるだけしない」などの記述が見られる。BPSDとは認知症に伴って起こる行動・心理症状のことだが、こうした患者さんの症状に対して抗精神病薬の有効性に疑問が投げかけられている。さらに抗不安薬についても「原則使用すべきではない」ともある。

 もちろんすべての薬が有効ではないという訳ではない。問題は認知症の治療にほとんど知識がなく経験も浅い医師がむやみにこうした治療薬を使用することだ。認知症の専門医の少なさも現状の大きな課題だ。

 さらに高瀬医師は、「認知症の治療は薬2割、ケア8割」とも言う。在宅診療で患者さんの家を訪問してみると、介護者の対応の仕方や家族関係などで大きく変化する。このケアの質や人間関係などの環境要因こそBPSDの内容や認知症の進行具合をもっとも左右する最も重要な要因。認知症について周囲がしっかりと勉強し、認知症の病態や心理状態をしっかりと理解してあげることで本人にとってもケアする側にも結果として大きな負担軽減となるはずだという。

 『認知症、その薬をやめなさい』は、認知症に対するケアと薬の適正化というテーマにとどまらず、意外に知られていない認知症の種類や代表的な5つの中核症状、BPSD(周辺症状)、その治療方法まで分かりやすくまとめている認知症ケア大全とも言える。

「在宅医療に携わるようになり、個人宅でも施設でも患者さんの体の延長としての療養空間のホメオスタシス(恒常性)を如何に維持するかがきわめて重要だと思っています。そこに生じるマイナスの変動要因のショックをいかに和らげるかが在宅医療の役目であり、その積み重ねが認知症の人が地域で当たり前に暮らせる社会を実現していくののだという自覚と覚悟が毎日の診療の支えとなっていますと」と高瀬医師。

 今後は認知症の在宅ケアの領域で積み重ねた認知症治療適正化プログラムなどのノウハウをEラーニングシステムを通じ多くの医療・介護職、さらには自治体などとも共有したいと言う。
(取材・文=編集部)

高瀬義昌(たかせ・よしまさ)
信州大学医学部卒業。麻酔科、小児科研修を経て、数々の民間病院に勤務後、2004年にたかせクリニックを開設、院長として就任。医療・介護・福祉の統合化と真の“かかりつけ医”を模索しながらスーパーコモンディジーズである認知症の社会的ソリューションを中心に取り組んでいる。
特定公益増進法人 日米医学医療交流財団 常務理事、ITヘルスケア学会 常任理事などを兼任している。

バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子