全身化換算のトリックとは
そして内部被ばくについても、外部被ばくと同様に身体の臓器に均一に吸収されると仮定して計算されているのです。しかし、内部被ばくの影響は、それでは正確にとらえられません。アルファ線は体内では40ミクロン程度しか飛びませんし、ベータ線も周囲数ミリの細胞にしか当たりません。
ですから実際に放射線が当たるのは、アルファ線やベータ線を出す物質の周辺の何層かの細胞であり、アルファ線やベータ線による内部被ばくの場合は、1キログラムの塊に放射線は届くことはないのです。
正確には、実際に当たっている細胞集団の線量を計算すべきなのですが、全身化換算して表現するために、内部被ばくの線量は極めて低い値となります。
たとえて言えば、目薬を口から2~3滴投与した投与量を全身化換算しているようなものです。目薬は目に点すから効果や副作用があるわけですが、それを口から2~3滴飲んでも全身的にみればまったく影響ない量であることはおわかりでしょう。
線量が同じであれば、外部被ばくも内部被ばくも影響は同等と考えると取り決められているので、内部被ばくは極少化された線量となるため、問題とならないとされてしまうのです。こんな計算上のトリックがなされています。ICRPの考え方は、吸収線量が同じであれば、総損傷数は同じと考え、発がんリスクも同じと考えています。