放射線被ばくの健康被害を過小評価するICRPのお墨付きは本当に正しいのか?

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チェルノブイリ事故後、周辺住民にはさまざまな病気が増加

 2014年12月、福島県の子ども4人が「甲状腺がんの疑いあり」と診断された。東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査によるもので、事故直後の1巡目の検査では「異常なし」とされた子どもたちだ。調査主体の福島県立医科大学は、確定診断を急ぐとともに、事故による放射線の影響かどうか慎重に見極めるという。

 検査の対象は、1巡目が事故当時18歳以下の約37万人、2014年4月から始まった2巡目は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万5000人。1次検査で超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、その程度によって血液や細胞などを詳しく調べる2次検査を受ける。

 その一方、政府は「実効放射線量 100mSv 未満では身体的被害が発生する証拠はない」との立場を繰り返し、それを補強するために学校用テキストを頒布。年間 20mSv以下の被ばく量の汚染地に住民の帰還を進めている。原発事故に基づく放射線の影響に懸念を感じる人々が少数派となって孤立し、自主避難を行うことが難しい状況となっている。

 これまで政府は、住民被ばくの基準値を年間1mSvとしていたが、原発事故に急遽20mSvまで引き上げた。原発が爆発すると急に人間が放射線に強くなるということなどあるはずがない。

 しかし、メディアにおいて各専門家は「事故の収束過程では基準値を20mSvまで上げてもよいことになっている。これはICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に従っている」と説明してきた。ICRPがお墨付きを与えているのだ。

医者も放射線の専門家たちもICRPに洗脳されてきた!

 ICRPとは、放射線防護において世界で最も権威ある機関で、各国の放射線防護政策や法律はその勧告を参照している。日本の場合、放射線防護政策はICRPの勧告そのままだ。医療従事者を含め放射線を扱う作業従事者は、国の法律に従って毎年講習や健診を義務付けられ管理されている。そこではICRPの放射線防護体系が叩き込まれるため、それに疑問を抱いたり反抗したりすれば放射線を扱えなくなる。

 「ICRPの放射線防護学は似非科学だ」と、放射線科医である北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は、次のように警鐘を鳴らす。

 「政府は、低線量被ばくや内部被ばくを軽視しているICRPの報告に依拠してすべて対応している。ICRPは研究所もなく専任の研究員もいない組織。単なる委員会だが、原子力関係団体から多額の寄付金や運営費を受け取り、原子力政策を推進する立場で健康被害を論じている感が強い。原発事故における内部被ばくを、全然当たってない細胞までも含めて臓器換算や全身化換算して被ばく線量を極小化する"トリック"を使っている」

 「セシウムは1回摂取の場合でも時間とともに肝臓、心臓、腎臓などの臓器や筋肉に不均一に入り込むことが確認されている。内部被ばくの場合、ずっとそこに居続けて、継続的に細胞分裂しているいろいろな時期の細胞に当たる。放射線感受性が高い時期の細胞に当たるから、確実に影響が強いと考えるべきだ」

 100mSv以下でも発がんが増加するなど、健康障害は多数の論文で報告されている。しかし、ICRPはこれらの報告に対して科学的な根拠がないため、反論することもできずに、無視するという姿勢をとっているという。

 チェルノブイリ事故後、内部被ばくを受けた被災地住民の間に、内分泌疾患、血液疾患、心臓病、脳卒中、消化器疾患が増加した。がんだけでなくさまざまな病気が増えたのだ。

 西尾医師も結成よびかけ人に名を連ねる「市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝研)」は、政府に対して次のように訴える。

 「現時点で福島原発事故と甲状腺がんの関連を否定することは非科学的である。データを全体的に評価すると、放射線被ばくによる甲状腺がん増加のおそれが高いという前提で、対策を考える必要がある」

 政府は一部の"専門家"の意見だけを重用することをやめ、被ばく回避と長期的な検診体制の構築に取り組み、高線量地域への帰還施策をやめるべきではないだろうか。
(文=編集部)

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