連載「死の真実が“生”を処方する」第25回

日本人の3割が苦しむ「花粉症」〜治療薬の眠気と交通事故の発生率は関係アリ!

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花粉症の治療薬はどうなっているのか?

 さて、花粉症に対する治療ですが、鼻アレルギー診療ガイドラインによると、早期に内服薬を使用することが推奨されています。症状に応じて複数の作用機序が異なる薬剤を組み合わせれば、花粉が大量に飛散する時期でも大きな苦痛を伴わずに日常生活を送れるとのことです。

 花粉症を含めたアレルギー疾患の治療薬として代表的なのは、抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンはアレルギー疾患の発症において、中心的な役創を担う物質であり、痒み、鼻閉(鼻づまり)、鼻汁などを引き起こします。この物質を阻害するのが抗ヒスタミン薬ですが、時にはその作用が脳に及んで、眠気の副作用を引き起こします。

 古くからあるものを第一世代の抗ヒスタミン薬、平成3年頃から発売されたものを第二世代の抗ヒスタミン薬と呼んでいますが、第一世代の抗ヒスタミン薬では、高率に眠気が発現することがわかっています。

治療薬による副作用に注意!

 花粉症の薬を飲むと、眠くなる、ボーッとする、という方もいらっしゃるでしょう。これは、前述のように抗ヒスタミン薬の副作用です。もちろん第一世代だけでなく、第二世代の抗ヒスタミン薬でも眠気の副作用があります。

 特に第一世代の抗ヒスタミン薬を飲んでいる人は、眠気に襲われる可能性が高いため、自動車の運転などは危険です。薬局や医師などから自動車を運転する際には十分注意を払って下さいと言われた方もおられるでしょう。

 かつて、これらの薬剤が自動車運転に及ぼす影響を調べるため研究がされてきました。何人かの人に薬を飲んでもらい、その後に自動車運転シミュレーターを操作してもらいました。

 その結果、第一世代の抗ヒスタミン薬を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べてブレーキ反応が遅く、また車間距離も一定しなかったそうです。さらに多くの交通事故例を解析した報告によると、第一世代の抗ヒスタミン薬の内服と交通事故発生との間には有意な因果関係があるとのことです。

 したがって、自動車の運転や機械の操作に従事する人は、眠気の副作用が生じにくい薬を選択する必要があります。しかしながら、薬によって性質が異なりますし、眠気は主観的な感覚ですから、皆さんも自分に合う薬を選んでほしいと思います。

 このようなことから、「花粉症の治療薬を飲むと眠くなるから飲まない」とう方がいますが、一般に眠気というのは誰にでも起こるものです。眠気が花粉症の薬によるものかを客観的に判断することは困難です。

 ですから、自らが責任を持って、自分に合う薬を使ってほしいと思います。市販の風邪薬やアレルギー性鼻炎の薬には、第一世代の抗ヒスタミン薬と同じ成分が含まれているものがあります。眠気が生じにくい薬を希望する場合は、医師に相談して処方してもらうほうが良いでしょう。


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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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一杉正仁
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