日本でも導入する学校が出てくるか!?(写真はTODAY Parentsより)
さまざまな学術的研究から「座る時間が長いと健康に良くない」という認識が浸透し、立って作業することが見直されてきた昨今。立ったままで仕事ができる「スタンディング・デスク」が注目され、企業でも導入するところが増えてきているようだ。
アメリカでは今、その流れが教育現場にも及んでいる。多くの学校でスタンディング・デスク導入の動きが広がり、健康や学習能力の向上、さらには問題行動の改善にも繋がるかもしれないという。
立って勉強するだけで運動不足解消
先月「Pediatrics」オンライン版に掲載された米・イェール大学看護学科の研究では、学校でスタンディング・デスクを使うことにより、子どもたちがより活動的になると報告された。
研究者らは、5〜18歳の就学児童を対象とした8件の国際研究をレビューした。デスクには必要に応じて椅子も使えるよう調整できるものと、椅子を使えないものの両方があったが、8件のうち半数の研究では、スタンディング・デスクの使用で子どもの座る時間が1日約1時間も減少。2件の研究では、立って過ごす時間が最大31%近く長くなっていた。また従来の机を使う子どもに比べ、テレビやPCの前にいる時間が1日1時間以上少なくなり、歩き回る時間がはるかに多くなった。
研究者は「スタンディング・デスクを使うと、1時間あたり32kcal以上のエネルギーが消費されるとする研究も。これは1日225kcalとなり、放課後にローラースケートやスケートボードで遊ぶことに匹敵する」と分析。学校でのスタンディング・デスク使用が、子どもの運動不足解消に役立つ可能性があると結論づけている。
12歳で頭打ちの認知能力もアップ!
運動促進や肥満防止だけではない。テキサスA&M大学・公衆衛生学部が行った予備研究では、学校でスタンディング・デスクを使った子どもたちの注意力と集中力が向上し、頭が良くなることを示唆するデータが得られたという。
研究チームは、高い机が設置され、立つことが推奨されている高校の新入生27人を1年間にわたり追跡。秋と春の両学期に「迅速な意思決定」「推論能力」「作業記憶」「認知戦略の修正能力」「認知の柔軟性」を評価する5つのテストを行ったところ、認知スコアが全体で7~14%も向上した。
また、NIRS脳計測装置という脳を画像化する機器を使い、生徒のテスト中の脳の活動を評価すると、生徒の左の前頭前皮質(一般に作業記憶と実行機能に関係する部分といわれる)の活動が増加していることが確認された。
この研究は予備的なものであり、座って学ぶ対照群との比較はされていない。しかし論文は、生徒に確認された認知スコアの向上は、1年間の成長や教育による可能性は低いと主張している。これらのテストのスコアは通常12歳くらいで固定されるため、今回のような短期間の教育がスコアに大きく影響する可能性は低いのだという。