インフルエンザワクチンが値上がり Rina/PIXTA(ピクスタ)
インフルエンザのワクチンに危険信号が点滅している。それには理由が2つある。
ひとつは、ワクチンなどの研究開発を行っている「化学及血清療法研究所(化血研)」の不正製造が発覚し出荷停止したこと。ワクチン不足を懸念した厚生労働省は、インフルエンザが流行する前の10月に出荷停止を解いた。
だが、化血研は40年間も国の承認と異なる製造方法でワクチンを作っていたことを隠蔽してきたことになる。重大な副作用の報告がないとはいえ、許しがたい行為だ。
今まで我々は“いかさまワクチン”を打たされてきたわけだ。国立感染症研究所によると、国家の検定にも合格しているので、出荷停止が解除されたという。
もうひとつは、昨冬に予防接種をした人が、軒並みインフルエンザに罹ったこと。前シーズンは3月頃にも再流行した。「接種しても効果なし、3000円も払ったのに医者通い」とぼやいたものだ。
ウイルスの遺伝子が異変し、ワクチン効果が低下
3月中旬に国立感染症研究所の小田切孝人センター長が、「今シーズンはウイルスの遺伝子の変異により、ワクチン効果が低下し、約6割が効きにくくなっていた」と異例の発表をした。
同センターでは毎年、インフルエンザのワクチンの調査を行っている。前シーズンに流行したA香港型ウイルス80株について、ワクチンが体内での増殖を抑制できるか分析した。
その分析によると、64%にあたる51株がウイルスの増殖を一定の基準以上防ぐことができなかった。そのため、「ワクチン効果が低下していると考えられる」と判定した。
昨冬はインフルエンザが猛威をふるい、患者数が200万人前後になった週が続いたのも、感染拡大の要因のひとつと専門家はみている。当時、小田切所長は「来シーズンにはより効果の高いワクチンを供給できるようにしたい」と言っていたが……。