点鼻スプレー型のインフルエンザワクチン(写真はフルミストの製造会社MedImmune Inc.のHPより)
秋は来るべき冬に備える時期。冬期の健康を維持するために、インフルエンザ対策も怠ってはいけない。重篤化すると死亡することもあるインフルエンザは、通常の風邪とは違って、ウイルスが感染して生じる病気だ。
感染すると2〜3日の潜伏期間を経て、たいていの場合、突然の高熱で発症する。全身のだるさと筋肉関節があり、体力がない高齢者では肺炎になったり、子供ではひきつけや脱水症状を起こすこともある。
また、ウイルス感染なので、爆発的な流行をすることがある。1918年に全世界で流行したスペイン風邪では、数億人が感染し、数千万人が死亡したと言われる。人類滅亡や生物科学兵器を題材にした小説や映画のなかには、毒性の強いインフルエンザが大流行して人類のほとんどが死亡し、生き残った主人公がサバイバルするという表現が繰り返されるが、過去の人類が感染症と闘ってきた歴史を知れば、あながち大げさとは言えない。
鼻に2回スプレーするだけ
対抗策のひとつは、ワクチンの接種だ。ワクチンは、毒性を弱くしたウィルスをもとに作られる。これを注射などで体内に入れると、免疫反応によって抗体ができる。この抗体が、体外からやってきたインフルエンザウィルスと闘い、たとえ感染しても重症化せずに済む。
弱毒化したウィルスを体内に入れるため、インフルエンザワクチンの接種にはリスクがある。そのための技術革新が続けられてきた。いま注目されているのが「点鼻スプレー型」のインフルエンザワクチン「フルミスト(4価経鼻インフルエンザ生ワクチン)」だ。
フルミストの接種方法は、注射ワクチンとは異なり、鼻に2回スプレーするだけ。接種方法が簡便なため、すでに欧米では主流のワクチンだ。また、その効果は、約1年も維持される。したがって、この冬に備えて、今の時期からの早期接種も可能だ。これはワクチン接種のブレークスルーだ。
ただし、次の項目に当てはまる人は接種の対象外となる。
●2歳未満、50歳以上の人
●いま喘鳴がある人
●ギラン・バレー症候群の経験がある人
●糖尿病の人
●妊娠中または2歳以下のお子さんに授乳中の女性
●タミフルなどインフルエンザの薬を服用中の人
●白血病またはその疾患と同居している人
また、ワクチンは人体の免疫機構を利用しているため、免疫機能ができあがっていない乳児や、免疫機能が低下している高齢者や病者は避ける必要がある。
このフロミストは、日本ではまだ保険適応外のため自費診療になる。1回のワクチン接種費用は1万円前後。接種方法は簡便だが、通常に比べると高額だ。