しかしながら、専門の介護職でもない人間が、長丁場の介護をひとりで完璧にやり遂げようとすること自体が無理なのだ。特に、常時、高齢者を見守らなければならない心の負担は、更年期の女性にはとてつもないストレスになる。「介護離職」を余儀なくされ、高齢者を見守っているうちに、自分が「介護うつ」にかかってしまったというケースも多い。素人が介護をする場合には、愚痴をこぼせる相手、SOSを出せる相手をもつことが大切だ。自分に対する期待値をうんと低くして、周囲に広く助けを求めていこう。
高齢化社会は二十一世紀の構造的な問題である。老老介護はすでに日常の風景となっている。介護は高齢者の生活の質(Quality of life=QOL)に直結する問題であり、社会保障制度が十分に確立されていないなかでの療養は、闘病する当事者のみならず、介護する側の家族の生活環境や精神状態にも配慮して、社会全体でどう支えていくかを考えていく必要がある。もはや介護問題を女性の犠牲のもとにクリアしようという発想は時代遅れといえよう。
<編集部から>
介護が必要な65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、介護する人も65歳以上である「老老介護」の世帯の割合が昨年の調査で、51.2%に達し、初めて5割を超えた。(厚生労働省、2013年の国民生活基礎調査)。また認知症高齢者が同居する認知症高齢者の介護を行う“認認介護”も、老老介護と同様に近年増えつつある。