更年期と深い関係があるエストロゲンshutterstock.com
女性の体は、卵巣から分泌される二つの女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)によって支配されている。
このうち、更年期の症状と深い関係があるのはエストロゲンである。エストロゲンの分泌量は20代から30代をピークに減り続け、50歳ではピーク時の5分の1程度になる。この時期、エストロゲンの分泌が一気に低下してしまうことから、様々な心身の不調が現われるのである。これをエストロゲン欠落症状という。
このメカニズムをもう少し詳しく説明しよう。
卵巣の働きを支配しているのは、脳の中にある下垂体という場所である。卵巣から分泌されるエストロゲンが減少すると、下垂体は卵巣へ向けて、ホルモンを分泌せよ!という指令を出す。これが卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)で、あわせて性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)という。
さらに、この下垂体の働きを支配している最高司令室が、脳の視床下部という場所である。視床下部からは下垂体に向けて性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gn-RH)が分泌され、下垂体の働きをコントロールしている。つまり、視床下部→下垂体→卵巣という指令体系が、常に卵巣の働きをしっかり見張っているというしくみである。
更年期に卵巣から分泌されるエストロゲンが減少すると、視床下部から指令を受けた下垂体が性腺刺激ホルモンを分泌して、しっかり働け!と卵巣に司令を送る。ところが、肝心の卵巣は機能が低下しているために司令に反応できず、エストロゲンは減少し続ける。このため下垂体からは更に多量のホルモンが分泌される。あたかも勉強する気のない子供を躍起になって叱りつける母親のように、この働きかけは空回りし、脳から分泌されるホルモンだけが過剰になっている、この不安定な状態が更年期なのである。
つまり、更年期とは、脳から分泌される指令ホルモンと卵巣が分泌するホルモンとの均衡が崩れて、体がバランスを失った状態だということができる。
男性にもやはり更年期障害はある
ところで、更年期障害は女性に特有のものではない。最近では男性にも更年期障害があることが認知されるようになってきた。
そのメカニズムは女性と同様で、精巣から分泌される男性ホルモン(テストステロン)が減少することによって様々な心身の不調が現われる。全身倦怠感、不眠、性欲減退、勃起不全(ED)などの身体的症状のほか、気力や集中力の低下、イライラ、抑うつ状態などの精神的症状が出現する。これらを総称して加齢男性性腺機能低下症候群(Late-onset hypogonadism=LOH症候群)と呼んでいる。