悪玉菌が蔓延した腸では腐敗によって臭い有毒ガスがたまる(shutterstock.com)
脳と密接につながり、免疫器官として働く腸――。健康に大きく関わる腸内環境を左右しているのは、100兆個にも及ぶといわれる腸内細菌なのだ。腸内環境のよしあしは、自分の腸にどんな腸内細菌が住みついているのかによってかわってくる。
我々の体には、その数、100兆個、種類でいうと数百種類、重さにして約1~2kgの細菌が常在しているといわれている。細菌は、皮膚、消化管、呼吸器系等あらゆる体表面に存在し、人間と共存しているが、その9割は消化管に生息している。消化管に住む細菌はそれぞれの種類ごとに集団をつくっており、「腸内細菌叢」とよばれている。
実は、この膨大な数の腸内細菌が腸内の環境を左右しているのだが、そもそも腸内細菌とはどのようなものだろうか。
善玉菌、悪玉菌、どちらにも属さない中間の菌(日和見菌)
腸内細菌をその働きや影響から分類すると、善玉菌、悪玉菌、そのどちらにも属さない中間の菌(日和見菌)の3つに分けることができる。
●善玉菌:乳酸菌やビフィズス菌に代表される。消化吸収を促進、便性の改善など腸の働きをよくしてくれる。そのほか、感染防止、免疫刺激など健康維持や老化防止に役立つ。腸内細菌のうちの約20%を占める。
●悪玉菌:ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌、大腸菌(毒性株)などに代表される。たんぱく質を腐敗させ、ニトロソアミンや二次胆汁酸などの発がん物質を産生したり、ガスを発生させたりする。そのため、健康を阻害し、老化を促進させる。まさに悪玉の菌。腸内細菌のうち、約10%。
●中間の菌(日和見菌):バクテロイデス(無毒株)、大腸菌(無毒株)などに代表される。腸内細菌の70%と最も多く存在し、もともとは善・悪どちらの作用も及ぼさないが、善玉菌、悪玉菌の優勢な方につく性質があり、そのために日和見菌とよばれる。体が弱ったりすると、悪い作用を及ぼしたりする。
我々が健康でいられるのは、善玉菌が悪玉菌をおさえ、一定のバランスを保ってくれているから。善玉菌が優勢なら、日和見菌も味方につき、悪玉菌が増えることができない。免疫のバランスも整い、アレルギーを抑えたり、細菌やウイルス、がんなどに対する抵抗力もつく。
ところが、逆に悪玉菌が増えてしまうと、腸内の腐敗が進み、腐敗物質が体内に増え、長い期間を経て、肝臓や腎臓、心臓など多臓器に負担をかける。それが老化を進め、がんをはじめとした生活習慣病のもとにもなる。